思っていたよりずっと洒落た
ひしや寅蔵だが、袖を通そうと思った浴衣の柄は意外にも可愛らしいというか、あか抜けない。
お酒の黄桜のカッパを思い出すようなイラスト、それも色っぽいカッパではなくユーモラスなやつ。
とにかくそれを着ようとしたらパパが色浴衣を選んで来ればと言った。
そうだった、女将さんがどうぞご自由にと言ってたっけ。
水色の地に蛍の柄を選んでみた。確か帯は締められなかったら手伝いますよとも言ってくれたが、外湯を9つも巡るのだからいちいち硬い帯を締めるのもなんだと思い、そこは普通の紐帯を使った。
色浴衣のサービスの有無で宿泊する旅館を選んだりしないけど、実際に好きな色浴衣を着るとテンションあがる。
これから温泉街繰り出すぞーっとめちゃめちゃ楽しくなる。
「今日はもう3湯入ったよね?」とパパが確認するように言った。
3湯?
「いやいや早朝から草津の
関の湯、
千代の湯、
白旗の湯、
長栄の湯、
睦の湯、
こぶしの湯、草津を離れて
ぽんぽこの湯、
地獄谷温泉後楽館・・・8湯だ。ああ、草津を温泉地として纏めて1湯と数えるなら3湯だけど」
呆れたようなパパの顔。パパは長栄の湯とぽんぽこの湯と後楽館に入ったので3湯で間違いない。
「聞いた私がバカでした」
いやいや、この時はまだ私も今日さらにはしごするとは思っていなかった。思っていたけど思っていなかった。
思い返せば昔渋温泉九湯巡りをした時が自分が一日に入った温泉の最高数を記録していたと思うけど、今日はそれをあっさり塗り替える羽目になるとは考えていなかった。
渋温泉九湯巡りとは渋温泉街にある9つの外湯を回り祈願のための巡浴手ぬぐいにスタンプを押すと九(苦)労を流し、厄除け、安産育児、不老長寿といったご利益があるといういわゆる温泉のスタンプラリー。
一番湯から九番目の渋大湯までスタンプを集めた後は渋大湯の向かいの高台にある渋高薬師をお参りして満願成就。
この九湯巡りは基本的に渋温泉の旅館の宿泊者のみ対象の特典だが、日帰り観光客は利用できないのか?
この件に関しては基本的には日帰り客は500円で九番目の渋大湯のみ利用できることになっている。
それは各旅館の希望を考えれば理解できる。
そしてこういうルールはその時々で変わっていくものだという前提で、もし日帰りで渋温泉九湯巡りがしたい場合のアドバイスをするとすれば、事前に旅館組合ではなく渋温泉有料駐車場か渋温泉の土産物屋など日帰り客を相手にしているところに電話をして、渋大湯だけでなく九つの外湯に入る鍵を貸してもらえるか、もし貸してもらえるなら条件があるのかなど問い合わせてみたら良いと思う。
さて、私は2004年に来た時に既に9湯回ったと書いたが、何しろ適当な性格なもので1番湯から順番には回っていない。端っこの3番湯からスタートした。
ついでに手ぬぐいも買ってない。だからスタンプも押してない。
今回はパパが「渋温泉の九湯巡りなら手ぬぐいにスタンプを押さないと」と言うので、ひしや寅蔵にチェックインするときに女将さんに手ぬぐいを売ってもらった。
もちろん回る順序も正しく一番湯からにするつもりらしい。
渋温泉街はこのひしや寅蔵から近い渋大湯を中心として、温泉街のメインストリートを安代方面に向けて
1番湯 初湯
2番湯 笹の湯
3番湯 綿の湯
それからそのメインストリートと横湯川沿いの車道の間に並行して通っている通り沿いにやはり中心地から
4番湯 竹の湯
5番湯 松の湯
最後は再びメインストリートに戻って地獄谷方面から中心地の渋大湯方面に向けて
6番湯 目洗の湯
7番湯 七繰の湯
8番湯 新明滝の湯
そのまま中心地に戻ってきて新明滝の湯のほぼ斜め向かいに
9番湯(結願) 渋大湯
とまあ、こんな順番になっている。