子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★☆☆ 泉質★★★★☆ 温度は野沢にしては適温だが湯口など熱いので注意
- 設備★★★☆☆ 雰囲気★★★☆☆ 温泉街の中心に近くて便利
子連れ家族のための温泉ポイント
独身時代の格安スキー旅行も含めて、今まで野沢温泉に泊ったことは3回ほど。
野沢温泉は外湯文化があり温泉は共同浴場に入りに行くものと思っていた私は、予算的な理由もあって今までは中心地から南西に大きく外れた民宿や民宿的な旅館にばかり泊ってきた。
今回泊まる静泉荘はかなり中心地に近い。
なんたって野沢温泉の旅館組合すぐ斜め前ぐらいにある。
今までの民宿が13ある外湯の中でもぽつんと一つだけ南西に外れてある中尾の湯だけが行くのに便利な立地だったのに対し、静泉荘はほぼ等距離に大湯だとか、横落の湯だとか、河原湯だとか、上寺湯だとか熊の手洗い湯だとか、麻釜の湯だとかがある。もう外湯巡りのパラダイスだ。
中尾の湯のある車通りの激しい県道38号線をずっと旅館組合のある角まで来て、そこを左に曲がれば急坂の入り口に静泉荘はあった。
無理やりに作ったような駐車場の奥に玄関があって、建物はあまり新しくは無く気さくな感じ。
玄関横の狭い階段の下は浴室になっているようで、下から白黒のにゃんこがぞろぞろとチェックインに来るお客さんを見上げていた。
静泉荘の夕食は、宿泊料から言ったら大盤振る舞いの豪勢さだった。
特にお刺身が凄い。野沢温泉は山の中だけど、意外と日本海が近いからかも。
お酒の持ち込みも構わないとのことで、さっき買ってきた苗場山の他、神亀の純米活性にごり酒手造りなど開ける。
苦労して温泉仲間が共同浴場で作ってくれた温泉卵も完璧な出来栄えで感動。
食べ終わってからも部屋に戻ってみんなで飲みまくり。
これは終わってからだとお風呂に入るのも大変そうと、こっそり途中で抜けて、宿のお風呂に出かけた。
静泉荘では奈良屋の湯を引いている。
静泉荘は以前は長野電鉄の保養所だったそうで、今も契約旅館ではある。
野沢温泉の老舗旅館奈良屋旅館は、麻釜から中心地へ下ってくる坂の途中に建っている。日帰り温泉のふるさとの湯のすぐ近くだ。
坂の数軒上には漫画のらくろの作者、田河水泡が定宿にしていたことでも知られるやはり老舗の村のホテル住吉屋が建っているが、奈良屋の源泉はこの住吉屋の地下で湧いているという。
住吉屋の敷地内で湧出しているが、住吉屋ではこの源泉を使っていない(住吉屋のお風呂のお湯は別の源泉)。
住吉屋の地下で湧き、奈良屋の湯と名付けられたその源泉は、奈良屋、中むら屋旅館、静泉荘など限られた旅館(旅館の他にこの源泉を使っている医院がある)に引き湯され使われていると静泉荘の女将さん談。
住吉屋は野沢温泉の源泉の多くを占める麻釜のすぐ下だし、あのあたりならいくらでもお湯が湧いていそうだ。
しかしそんなわけで、湯量豊富な野沢温泉においても、奈良屋の湯に入れる宿はなかなか希少だ。
女湯は誰もいないので電気のスイッチを探すのにちょっと手間取った。
脱衣所は狭かったが、浴室はそうでもなかった。
男湯は浴槽が二つあったと聞いていたが、女湯は一つ。
とても湯口が特徴的で、おかっぱ頭の少女が座ってお湯の出る瓶を持っている。
少女の表情はいわゆるアルカイックスマイルというやつで、夜に一人でお風呂に入ろうとして見るとドキッと怖い気もする。
湯口から出たお湯は、木の樋を通って何故か湯船には入らず、浴槽を半周してそのまま流しに吸い込まれていく。
じゃ、じゃあ湯船のお湯は!? というと、その樋からあふれた分だけが少量お風呂に落ちる。
なんでこんなに勿体ない使い方をしてるのかというと、単純に熱すぎるかららしいのだが、確かに樋の先に流れるお湯をちょっと踏んでみたら火傷するかと思った。
マッチのにおいは強いが、どちらかというと穏やかなお湯だった。
適量だけ使っている分、むしろ少しぬるめなぐらい。
無色透明で湯の花はほとんど見えない。
飲んだ後とかにあまりパンチの効いたお湯に入りたくなかったので、この癒し系のお湯はいいかも。
髪の毛も湯船の源泉を汲んでじゃばじゃば洗うと、温泉のにおいがほわ~っと漂って贅沢な気分になる。
宴会会場の懇談は、私がお風呂から上がった後も午前1時過ぎまでわいわいと続いた。
翌朝も、共同浴場をいくつか回ってきた後に、もう一度静泉荘に戻ってきた。
もし一ヶ所入る時間があるならば、静泉荘のお風呂にもう一度入っておくべきだろうと思って。
外湯と違ってここは泊らなきゃ入れない奈良屋の湯なんだし、せっかく泊まっているんだし。
静泉荘の女湯は誰もいなかった。
夜中にはちょっと怖いと思った湯口の石の少女像も、朝の光が斜めに差し込む中では哀愁を帯びて感じられた。