23.結願湯 渋大湯
竹の湯のある通りを真っ直ぐ行くと、先ほどの和合橋に続く境界線の道にぶつかる。
ここを左に向かえばすぐに
神明滝の湯、そして渋大湯に戻ってくることができる。
いよいよ結願湯、ラストの
渋大湯だ。
社と足湯の下に潜るように建物があり、
安代大湯なんかもそうだが両面に入り口がある。石畳の通りから見て右手から入ると女湯入り口、左手から入ると夢ぐり願い処と男湯入り口だ。
夢ぐり願い処というのは、占いと願掛けのミックスのようなもので、願掛け手桶を振っておみくじのように幸運の外湯番号を引く。出た番号の外湯に入浴して札に印を押し、願い事を書いて奉納すると叶うという。
九湯巡る時間や気力のない人が、どれか一湯選ぶのに神頼みするのもいいかもしれない。
渋大湯の看板にはオレンジ色の灯がともっていた。
中からは人の話し声がする。なんと言っても目玉の外湯なので人気があるのだろう。
もう時間は6時20分前。
なんだかんだで結局九つ全部廻ってしまったようだ。
ギィィと鍵を開けてドアを開くと、脱衣所に二人、浴室にも二人ほど先客がいるようだ。
流石に大湯なので脱衣所も広々としている。普通の浴室の他に子宝長寿の蒸し風呂もあるが、入り口が別なのでいったん体を拭かないと移動できないようだ。
何しろ渋温泉の顔とでも言うべき外湯だから、万病に効くということになっている。鍵を貸してくれた土産物屋でも、とにかく渋大湯だけでも入ってみて、そこが一番のお勧めだよと言っていた。
大きな四角い浴槽には、地下5メートルの岩盤から湧き出るというオレンジと緑の入り交じった茶色い濁り湯がなみなみとたたえられている。
色だけでも強いインパクトがある。濁りが激しく沈めた手もまったく見えない。
強い強い金気臭。今までの
綿の湯や
笹の湯の薄い金気臭などふっとぶくらいの鉄分を感じる。
肌のきしつきも強い。
浴槽も床も壁も全て木造。それも鉄分であちらこちら赤茶色に染められている。
浴槽は真ん中で二つに仕切られ、
湯田中大湯と同じように中が繋がって高温槽と低温槽に別れるようになっていた。
比較的熱めだが、入るのに躊躇するほどではない。
なるほどこれは天下の大湯の風格を備えているなぁ。