最終日 2003年9月1日(月)
夜半からまた雨が降り出したようだ。
朝、目覚めると激しい雨音がしていた。けれど今は屋根の下。テントと違って雨が降っても恐れるに足らない。
とはいえ、ちょっと朝風呂に行く気にはなれないなぁ。部分的に屋根はついているとはいっても開放的な露天風呂。小雨ならともかく、こうも土砂降りだとあまり楽しい入浴タイムにならないし。
温泉に泊まって朝風呂に行かないなんて珍しいが、あきらめて荷物の準備をしてそのまま朝食に行くことにした。
ここの朝食は洋食と和食が選べる。写真は洋食。パンが美味しい。フルーツも沢山。天気が良ければ外のテラスで朝食を食べられるそうだが、今日はちょっと無理。
帰る前にカナがハンモックで遊びたいという。
このペンションの庭にはハンモックがつるしてあって、昨日の夕方、レナが寝ているときもカナはパパと遊びに来た。
ママが支度をしている間、パパが子供たちを遊ばせることになった。雨上がりなのでハンモックもびしょぬれ。バスタオルを敷いたけど、それでも子供たちもびしょぬれ。
チェックアウトを済ませたら、雲が切れて明るい日差しが差してきた。
ほのみ亭の後ろにそびえる焼岳も輝いている。ああ、朝食前からこの天気だったら絶対朝風呂に入ったのに残念。
天気次第でずいぶん印象が異なる。ほのみ亭のお風呂はとても気に入ったけど、本当は晴れ渡った空の下で入ってみたかったな。ご主人と奥様、そしてここで働いている方々、お世話になりました。
ペンションほのみ亭のある中尾地区をもうちょっと登ると、足洗いの湯という足湯がある。
行ってみたらまだ部分的にしか湯が入っていなかった。何でも直前まで清掃タイムだったのだそうだ。清掃直後だからか、強烈に塩素臭い。でも無料の足湯でもきちんと清掃・消毒してくださることに感謝すべき。
子供たちは既にハンモックで洋服を濡らしていたので、下だけ脱がせて入らせた。夏休みも終わった月曜日の朝、他に誰も観光客はいない。足だけの温泉なんて実は興味が無かったのだが、実際入ってみると、なんだかぽかぽかして楽しいね。
次は新穂高の湯に行こうと思っていた。
川沿いのワイルドな露天風呂。料金も無料(寸志)。水着もOKの混浴。
ところがここでも清掃タイムにぶつかってしまった。
このお風呂は橋の上から丸見え。画像に写っている男性二人はデッキブラシでお掃除中。
昨日まで8月の週末で行楽シーズン真っ只中。開けた9月最初の月曜日の今日、がんがんとお掃除するのはよく判る。でも入れなくて本当に残念。こんなに景色がいいんだもの。家族でのんびり入りたかったな。
足洗いの湯といい、たとえ無料でも清潔にしてくれているんだなとよく判った。タダだからと汚したりせず、タダだからこそ感謝して使わせてもらわないといけないね。
閑話休題。
実は子供たちはプールで泳ぎたい。
温泉好きの二人とは言っても、3歳と5歳の子供。ひたすら温泉にばかり入っていても嬉しくない。雨上がりで暑くなってきたし、このところ泳ぎも上達してそれなりに大きいプールに入りたがる。
先週の房総キャンプと違って今回の旅行ではまだ一度も泳いでいない。どこか子供たちが泳げるところを探さなくては…。
この辺りでプールのある温泉…。あるある、新平湯温泉のヘルシーランド奥飛騨たるまの湯だ。新平湯ならここから近いし、早速行ってみようか…。
…しかし、なんとここも空振りに終わった。
定休日は木曜日なのだが年始・GW・お盆のあとは不定休となっており、これにたまたま当たってしまったらしい。行ってみたら入り口に臨時休業の札が下がっていた。平日は空いていていいんだけど、こういうこともままある。
仕方ないので替わりに選んだ行き先は、ここだった。
平湯温泉 平湯民俗館 平湯の湯。
なんとなく、民俗館併設だからちょっと遊べるかなと思ったのと、村営の立ち寄り湯で気軽かなと思ったのだ。お風呂よりプールに入りたいと思っている子供たちを連れて、旅館の立ち寄り湯をお願いするのはちょっと辛い。本当なら新穂高を離れる前に、せっかく平日なのだから
水明館佳留萱山荘か、槍見の湯槍見館に行きたいのは山々であったが、そもそも新穂高は離れてしまったので、これはまた次の機会に。
平湯民俗館は平湯神社の隣にある。直前まで地図を見ていて気がつかなかったが、車を降りてみたら景色に見覚えがあった。ああ、この道をもうちょっと上ると「
神の湯」があるんじゃない?、と私が言うと、パパは、そうだよ、道に表示が出ていたと言った。
昔一度平湯に泊まったことがある。温泉が好きになるよりもっと前のことだ。友人の
メタさんたちと女性だけのグループで平湯温泉のやまと館に泊まったのだ。そのとき歩いて神の湯に来た。こんなに雰囲気のある立ち寄りの共同浴場に入ったのは初めてで、お湯のことはよく覚えていないまでもロケーションに感激した。
平湯民俗館は、茅葺屋根の古い民家を二軒ほど移築したり改造したりして、その中に農具や衣類、祭事用の道具など展示してある。ぎしぎしと鳴る黒光りした木の階段(ほとんど梯子)を登れば、古ぼけた道具が所狭しと詰め込んである。
広さや大きさはそんなにたいしたこと無いが、ちょっとした撮影スポットが沢山ある。木の枠に花や野菜を入れて水を流しているところ、絵になるでしょう。でもこの水の中に沈んでいるトマトなどは売り物。一個50円。パパはここでお風呂上りにビールを買ったら、トマト一個サービスだから食べていいよと言われたそうだ。
この敷地の一角にお風呂がある。上の画像は男湯の入り口。ちなみに民族館の入館料は、お風呂込みで500円、お風呂無しだと300円だ。
こちら女湯。
沈んだ緑色の濁り湯だ。ちょっと熱め。それほど深くない。
ガイドブックには鉄分を含んだ単純泉となっていて、どんなお湯なのだろうと思っていたらこれがとても良かった。
私は青森の
黄金崎不老ふ死温泉に入って以来、鉄分を含む温泉は苦手なのだと思い込んでいた。だってあの温泉に入ったときは錆くぎみたいな強烈な臭いがいつまでも抜けず、頭がくらくらしちゃったから。ホント、三日も抜けなかったんだよ(その間、他の温泉にも入ったのに)。
ここのは違う。新しいぴかぴかの鉄がほんのり臭うような感じ。これならOK。
それにちょっと飲んでみてびっくり。予想していなかった味がした。
ちょっと甘めの炭酸だー。思わず顔がほころんでしまう。しゅわしゅわ感は無い。私の大好きな群馬の
上増田温泉砦乃湯にそっくりの味。
かなり意外な温泉だった。これはお気に入り。
昼食は平湯にて。
昨日も平湯で食べたから、今日は別のお店にしようと思ったのに、休み明けの月曜日だから御食事どころは軒並み休業。開いているのは昨日と同じよし本だけ。まあ、いいか…。
昨日は飛騨牛と朴葉味噌だったから、今日はお蕎麦。
画像は山菜蕎麦。凄い量の山菜だし、それにお皿代わりの朴葉がまたいい感じ。
最後に濃飛平湯バスターミナルでお土産を買って…。
本当ならこれで帰るところだけど、何だか益々天気が良くなってきた。
パパは言う。子供たちをプールに入れてやりたい。
まあ、さっき、たるまの湯に行く前にプールに行くよ、なんて言っちゃったものね。カナもレナも期待してるよね。
松本ICの傍でプールのある温泉はないかと言う。
ひとつ、条件ぴったりのがある。美ヶ原温泉ウェルネスうつくしだ。だがここでも定休日の罠にはまる。月曜休み。念のため携帯から電話してみたが、やっぱり休み。
他に松本近郊でプールというと…ラーラ松本という施設があるらしい。だが、ゴミ焼却場の廃熱利用だと言うと、パパはやめようと言う。この手のプールは家の近所にもいろいろあって日常的に使っている。せっかく長野に来たんだからせめて温泉を利用したプールにしたいという気持ちはよく判る。
待てよ。行きに高速で通った諏訪。あそこなら温泉もあるし、もしかして温泉のプールとかもないだろうか…。
走り出した車の中でパソコンを起動し、携帯からネットに繋ぐ。検索検索…あったあった。
上諏訪温泉 諏訪湖間欠泉センター。
ここは結構面白い。
一階がプール、二階が諏訪湖の展示施設とオルゴール館、三階が展望ラウンジになっている。変わっているのは温泉のプールはあるのに裸浴のお風呂は無いことだ。この手の施設としては珍しい。あくまでもプールで、お風呂は片倉館なり外湯か各旅館へ行ってくれということだろうか。
それにプールは室内だけでなく、外にもある。まあ、外のこれはプールというか、水着着用の露天風呂にしか見えない。
そしてこのプールのような露天風呂のような妙な浴槽からは、なんと目の前に間欠泉が吹き上げる様子が見られる。この目の前って言うのは誇張じゃない。ほとんど間欠泉の真下なのよ(笑)。
室内プールはこんな感じ。まあ、大人が真面目に泳ぐような規模のものじゃないですね。でも子供にはちょうど良い。深いところはレナではまったく足が立たない。
何故か一般客のほかに、コーチについて水中歩行を続ける年配のグループや、お子様スイミングスクールの団体もいて、益々妙な感じ。
滑り台があるかと思えばジャグジーもある。温度は普通の温水プールよりは温かいけどまあ、温め。
臭いも浴感もまるで無し。軽いカルキ臭。まあプールなので致し方ないか。
これがその間欠泉の吹き上げるさま。一時間に一回、どばーっと来る。
一応日本一の高さらしい。
いやぁここ、何が凄いといって、プール(露天風呂)の端まで行ってみていると、頭っから間欠泉を浴びてしまうこと。この日は中学生ぐらいの子供たちがそこまで行って「熱い熱い」と騒いでいた。何度目かに施設の人が「危ないからもっと下がって」と注意しに来たが、次の回でもやっていた。本当に懲りない…。ちなみに風向きによっては離れていても飛沫が飛んでくる。ちなみに飛沫は冷たかった(笑)。
温泉としてはハテナという施設だが、面白いといっちゃあなかなか面白い。
でも車に戻ってみると、決して温度が高いお湯じゃなかったのに妙に体がぽかぽかになっていることに気づく。やっぱり温泉は温泉。水道水とは違うんだな。
とっぷりと暗くなってきた諏訪湖を後にして、高速に乗る前にラーメン屋に入った。
何の気なしに選んだ店だったが、これがとてもおいしいラーメン屋だった。何故か旅行代理店もやっているらしく、店内にベタベタとタイ旅行のちらしが貼ってある。
カナもレナも大人の取り分けでいいやと思ったら、二人で一人前食べちゃったので、結局もうひとつ、追加で頼んだ。見た目怖そうだが実は気のいいおやじさんで、常連さんと一緒に「来週は諏訪湖で大きな花火大会があるんだよ、またおいでよ」なんていろいろ教えてくれた。
来週はとても行かれそうに無いけど、来年はチェックしておくね。乗鞍キャンプのおまけで寄った諏訪湖だったけど、これはこれで面白かった。
8月最後の週末に、友人たちと乗鞍にキャンプに行ったよ。
雨のテント生活も初めてだったし、とってもいい温泉に沢山めぐり合えた。
東京に戻ればまた熱帯夜だと思ったのに、何故か涼しい風が吹いていた。
このとき、今年の夏はもう決して手の届かないところに行ってしまったのを感じた。
おしまい