9.大湯の流儀
通りへ出てさらに真っ直ぐ行くと、そこは
野沢温泉の中心地、ランドマークの外湯、
大湯がある。
建物は
河原湯とも似ているが、もう少し背が高い。
道を挟んだ向かいには大湯の足湯、おくとがある。
何故か足湯には金髪の外人さんがくつろいでいた。温泉で国際交流という感じだ。
ここも脱衣所と浴室が繋がった作り。
入るなり、小柄で禿髪のはきはきしたご婦人が、「靴はここ、脱いだ服はその上」とびしっと言ってきた。
「ハ、ハイ」
野沢温泉の外湯は、脱衣棚の下に下足棚がついていることが多い。それも雪道に便利な長靴が入るように縦長。流行のロングブーツを履いていても心配ない。
「自分の靴の上に自分の服。そうしたら靴を間違えたりしないでしょ。そして入浴中もちらちらと服を確認すること!」
な、なるほど。
それに確認って、やっぱり風呂場泥棒みたいなのが多いのかな。
穂波温泉の外湯でも感じたが、管理人が常駐していないような無料の外湯には、そういったトラブルが多いのだろう。哀しいことに。
大湯は熱いので、二槽に別れている。
湯田中大湯や
渋大湯のような感じだ。片方に湯口から熱い湯をそそぎ、上の方は仕切ってあり、下だけ繋がっている。そうすれば熱い湯は上にぬるい湯は下に行くから自然と温度差が出来る。
笑っちゃうことに全員ぬるい方に入っていた。
とりあえず自分もぬるい方に入る。これでも十分に熱い。
ぬるい方に入ったまま、熱い方に手だけ入れてみる。
うっ、熱湯。
こりゃ駄目だ。
大湯で終わりならチャレンジしてみるけど、この先いろいろ回ろうと思ったら、とても熱い方には入れない。諦めよう。
河原湯と同じでゆで卵に苦みを入れたような味と臭い。
湯の花も大きいが、こちらは白い。
新しく入ってきた入浴客が、早速「靴は下、服が上」の洗礼を受けていた。
びしびしと指導するご婦人は服を着終えると颯爽と出ていった。彼女の纏った服は僧衣だった。
湯上がりは川原湯と違いものすごく温まっていた。外に出てもまったく寒さを感じない。
これはなかなか冬向けのお湯だなぁ。