「確か万座亭ならお昼が食べられるんじゃ無いかなぁ」
スキーに来たときのうろ覚えな記憶をたぐり寄せて私は言った。
ちょうど目の前にこぢんまりとした駐車スペースと万座亭の建物が見えた。
「ここでいい?」
「ちょっと中に入って先輩ご所望のかつ丼があるか見てくるよ」
がっちゃんが確認しに行ってくれた。
「大丈夫。かつ丼は無かったけど、ヒレカツはあったよ」
「じゃ、ここにしよう」
後から調べたらここは万座亭でも別館で、前にスキーの時に食事をしたのは本館の方で場所も全然違った。
一見、そば屋のような感じの店内。
パパは念願のカツを、私はあまりお腹が空いていなかったのでカツカレーを子どもたちとシェアすることにした。
でもカナもレナも結構お腹が空いていたようで、最初はそんなに食べないと言っていたのに、気が付いたら皿はほとんど空になっていた。しかも最後に残ったカツまでレナがちゃっかり持っていってしまった。仕方なくパパがカツを分けてくれた。
この店は何故かヒレカツは定食になっていないので、ライスは別に注文しなくてはならなかった。なんでだろう?
食べ終わって外に出ると、また霧雨が降っていた。
もう後は旅館に入るだけだからいいか。
私たちは車に乗って今夜の予約を入れてある
万座温泉ホテルを目指した。
ところでパパと話をしても、yuko_nekoさんたちと話をしても、信州高山温泉郷は穴場だということで意見は一致した。
昨日から女性陣は
五色温泉五色の湯旅館、
七味温泉紅葉館、
奥山田温泉レッドウッドインと温泉に入り、男性陣は七味温泉の代わりに
山田温泉大湯に入っている。
秋の連休だというのにどこもがらがらで、お風呂は独占状態に近かった。
正直なところ平日旅行と違って、どこも混んでいるんだろうと覚悟してきただけに意外だった。
東京から行く場合高速道路の距離が長いが、高速を降りてからは割に近い。
にも関わらずこの空きっぷり。
おまけに温泉はどこも極上で、絵になる贅沢な濁り湯露天風呂が標準装備。
いいんじゃない? 信州高山温泉郷。
これはまた再訪しなくては。
それが県境を越えて群馬に入ると、予測していたことではあるがえらく混んでいた。
山の中の万座温泉ですらこの混雑。
草津辺りはもっと凄い人出だろう。
万座温泉の中でもひときわ奥まったところにある万座温泉ホテルも駐車場には車が溢れ、玄関前も大勢の人が行き来していた。
私たちの車は宿泊者ということで建物入り口に一番近い駐車場の外れに停めることが出来たが、がっちゃんの車はトレーラーがあるので離れたところに停めざるを得なかった。
さて、我が家は万座温泉に来るのは三度目だ。
過去二回は日帰りで、泊まるのは初めてだ。
万座温泉には何軒も宿があるが、2回とも入った温泉はこの万座温泉ホテルだけだ。
最初の一回目は何も考えず、露天風呂の絶景を求めて
万座温泉ホテルの極楽湯(露天風呂の名称)にやってきた。
よく晴れたゴールデンウィークのことで、もう景色はこれ以上はないと言うくらいの感動ものだった。
二度目はスキーだった。それも自遊人という雑誌に万座温泉ホテルの無料入浴スタンプ帳がついてきたので、タダで入れるならとやってきた。
このときは極楽湯だけでなく、湯治場の雰囲気を残す
日進館という湯小屋にも行き、男女日替わりの鉄湯にも入ることができた。
でも日帰りなのであまり自由時間も無く、館内大浴場の長寿の湯には入ったことがない。
増して万座温泉の他の宿には足を踏み入れたことがない。
今回は長寿の湯はもちろん、できれば他の宿も一軒ぐらい行ってみたい。特に今有効な自遊人パスポートが使える万座プリンスホテルは狙い目だと思っている。