七味温泉 紅葉館

信州高山温泉郷 濁り湯で洞窟風呂や複数の露天風呂のある旅館

  • 所在地 長野県上高井郡高山村七味温泉 TEL 026-242-2710
  • 泉質 含硫黄-カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉(硫化水素型 中性低張性高温泉) 源泉名 牧新七味温泉と新七味の混合泉
  • 公式サイトURL http://shitimi-kouyoukan.com/
  • 設備等 男女別内湯、男女別露天風呂、洞窟風呂、別棟の男女別野天風呂など、食事のみも可
  • 入浴料 大人500円、小人400円
  • 日帰り入浴受付時間 10時~16時
  • ※洞窟風呂は男女交代制で、日帰り入浴受付時間内は女性専用となっている
[2007年10月のデータ(宿泊利用) ただし入浴料は2015年10月のデータ]

子連れ家族のための温泉ポイント温泉ランキング

  • 温度★★★☆☆ 泉質★★★★☆   お湯は少し熱め、泉質は特に刺激など無し
  • 設備★★★☆☆ 雰囲気★★★★★  白濁湯で深さが判りにくいので子連れは注意

七味温泉 紅葉館 宿泊体験レポート

七味温泉紅葉館の外観 七味温泉紅葉館の乳白色の露天風呂
七味温泉紅葉館の外観と露天風呂。露天風呂画像はクリックで拡大。

 信濃川の支流である松川に沿って信州高山温泉郷の温泉地は点在している。

 日帰り温泉のYOU遊ランドから始まって、子安温泉蕨温泉山田温泉松川渓谷温泉五色温泉などを過ぎて途中で道は二手に分かれる。左へ登っていけば奥山田温泉と山田牧場を経由してやがて二つの峠を越えた道は群馬県の万座温泉に至る。
 右の道は谷へと下る道。道の先は未舗装となり林道はやはり万座方面に延びてはいるものの今は一般車両通行止め。林道入り口手前に橋があり、橋を渡ったところにこぢんまりとした温泉地がある。
 この最奥の行き止まりに湯煙を上げる温泉が七味温泉。七本の源泉がありそれらを混ぜ合わせて使っていることから七味と呼ばれている。

 七味温泉の湯元である牧泉館を経営する老夫婦は既にリタイヤし、今は老後の人生を楽しんでいると教えてくれたのは紅葉館の女将さん。
 広い露天風呂のある旅館として知られた牧泉館は、2006年までは冬季を除き日帰りで営業していたが、今は完全に閉めきったままだ。

 牧泉館から七味温泉の各宿に引かれている七本あるという源泉も、全てのメンテナンスまでは手が回らず、今は三、四本程度しか使われていないと言う。
 七味温泉の宿の中には湯量が少なく循環しているところもあるようだが、紅葉館ではいくつもある浴槽の全てが源泉掛け流し、源泉温度や泉質を考慮して、季節や浴槽ごとにブレンドを変えている。

七味温泉紅葉館の道向かいの野天風呂 七味温泉紅葉館の野天風呂
七味温泉紅葉館の別棟の野天風呂

 さて紅葉館のお風呂は館内の内風呂と露天風呂、さらにそのうちひとつには洞窟風呂も付属している。
 その他に道を渡った向かいに別棟の野天風呂を有している。
 館内のお風呂は男女交代制だから、宿泊すれば全部で6箇所のお風呂に入ることができる。

 外観に華美なところは無いが、張り出した楓の枝が紅葉館の名の通り、季節には彩りを添えるだろう。
 部屋は正直なところあまり期待していなかったのだが、いやいやとんでもない、とても綺麗で広さも十分だった。
 帳場や階段のところに花や野草をあしらった手作りの装飾品があり、品良くまとまっている。
 夕食も山菜を中心とした山の宿らしい食材が綺麗に盛りつけられて並ぶ。家族旅行でも女性同士の旅でも喜ばれそうな感じだ。

 道向かいの野天風呂から紹介しよう。
 露天風呂ではなく野天風呂という名称から、私はもっと野趣溢れるお風呂を想像していたが、そこにあったのは開放感こそ溢れるものの、プールのように四角い無粋な浴槽が二つだった。
 一応周囲には岩を配置してあるし、どうやらお風呂の中にも座って休んだりできるように大きな岩がいくつか置いてあるようだが、浴槽の縁の作りのせいか景観から浮いて見える。

 二つあるお風呂のお湯は色が違っていた。
 手前がほぼ透明に近い緑。白い湯の花はぱらぱら浮いている。
 奥は綺麗な乳白色。濁りが強くて底は見えない。

 手前の浴槽の近くに源泉を貯める小さな槽と、そこにじゃぼじゃぼとパイプから注がれる源泉がある。
 その槽から別のパイプを通って二つある浴槽に源泉が流れ込むようになっている。
 浴槽に繋がるパイプは透明度が高い手前の方は出口が上向きに、濁り湯の奥の方は出口が下向きに付いていて、それぞれ浴槽に投入される湯量が異なるように作られていた。

 お湯としては真っ白な見た目の割に少しパンチに掛けるが、野天風呂から見る靄を被った山々の景色は濃淡の緑色を塗り重ねた絵画のようで、しばらくここに入っているとすっかり気分が良くなった。

七味温泉紅葉館の名物洞窟風呂 七味温泉紅葉館の内風呂
七味温泉紅葉館の名物洞窟風呂の入口と、内湯の様子

 館内の浴室に入ると、まず長方形の内風呂と洗い場。
 内風呂は四角い木の浴槽だ。
 まず入る前の段階で色の違いに気づく。この内風呂のお湯は野天風呂とは異なり薄墨色だ。
 そして気のせいかと思われるほど僅かだが、湯面に油膜のようなものが浮いていた。
 ゆっくり浸かって臭いを嗅ぐと、これはまた意外な臭いがした。
 この辺りではどこへ行ってもゆで卵のような臭いやマッチのような臭いがすると思っていたが、これはまた、揮発するような強い油の臭い。ゆで卵のような臭いも混じっているけど油系の方が強い。うん、驚きだ。
 肌触りはきしきしを通り越してぎしぎし言いそうだ。
 ゆで卵温泉の中にいきなりこのお湯とは面白い。かなり気に入ったかもしれない。

 館内の浴室は洞窟風呂のある方と無い方とあるが、洞窟風呂のある方の浴室は殺風景なコンクリの狭い廊下のような所に繋がっていて、なんと廊下の途中からいきなり浴槽になっていた。当然その先へ進むにはお湯の中をばしゃばしゃと歩かなくてはならないので鍾乳洞探検でもしているようだ。

 廊下はすぐに終わり、私たちは洞窟の中にいた。
 洞窟と言ってもごく小さいもので、その先に出口が見えている。
 出口を出ると露天風呂があった。

七味温泉紅葉館の湯口
七味温泉紅葉館の露天風呂の湯口

 この露天風呂は湯口が複数あって、片方は激熱、もう片方はぬるいお湯が出ている。
 ぬるい方は手で触っても心配ないが、熱い方はかなり熱い。
 入る場所によっては時々ふいに熱湯が流れてくるので要注意だ。
 温度は違うがどちらも臭いはよく似ている。両方とも少し焦げたようなゆで卵の臭いだ。
 露天風呂のお湯は綺麗なミルキーグリーンだった。白と緑の絵の具を溶いたような色。如何にも山の温泉らしい。
 湯口近くのお湯は鮮度も良い。

 山あいのこの宿は、すっかり流れてくる雲に包まれて今夜は月も見えないようだ。
 川の流れる音だけがさわさわと夜風に乗って流れてくる。