子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★☆☆ 泉質★★★★☆ 内湯のお湯は少し熱め、露天風呂は適温
- 設備★★★☆☆ 雰囲気★★★★★ 白濁湯で深さが判りにくいので子連れは注意
子連れ家族のための温泉ポイント
乳白色、コバルトブルー、墨色、クリーム色、濃緑色の五色に、季節や天候により変化する湯の色。これが五色温泉の名の由来だ。
温泉の発見は明治時代のこと。しかし台風の被害によりいったん全滅し、五色の湯旅館だけが再建された。
今や一軒宿となった五色の湯旅館の経営者は万座温泉豊国館の支配人を経験したこともある水野氏で、信州秘湯会の名誉会長も務める。
松川渓谷沿いに並ぶ信州高山温泉郷の中でもお湯の効能には定評がある。
泊まってみたいと思ったが、残念ながら予算が足りず今回日帰りで訪れてみた。
バス停の向かいに高級旅館とはもちろん違う、けれど歴史ある鄙び具合があるでもない、どちらかというと古くしかも無粋な感じの五色の湯旅館が建っている。
正直なところ、この外観からは1泊1万6千円以上する旅館には見えなかった。
スリッパに履き替えて館内を進み階段を降りると、廊下を大きな岩が遮るように突き出しているのに吃驚する。建物を建てるときに、岩を除けるとか考えなかったようだ。
しかもこの岩、よく見ると黄色い硫黄の粉がこびりついている。いかにも温泉地らしい岩だ。
内湯と露天とあるが、まず露天風呂に入って後から内湯に行くことにした。
露天風呂に通じるドアを開けて外に出ると川沿いのススキ野原。
正面に脱衣所らしき建物があってその向こうにちらりと岩の露天風呂が見えている。
ここは混浴露天風呂だったのだが、私はそのときそのことを知らず、男湯だとばかり思って入らなかった。
右手にすぐ女性専用の露天風呂があった。
こちらは深い緑に囲まれていて、一方だけ開けている方角に松川が流れているようだった。
お湯の色は灰色がかった白の濁り湯で、沈めた手足はほとんど見えない。
強いゆで卵のような臭いと何か薬品のような臭いが混ざっている。
それほど熱くはなく、ちょうど良いくらい。
ああ、ずっと東京でコンクリの建物ばかり見ていたから、こういう露天風呂に入るのは久しぶりだ。やっぱりどんなにお湯が良いだのなんだのと言っても、都市部のセンター系日帰り温泉では心が癒されない。
しみじみと湯に浸かる。
何かこう、肩に乗っていた重みがお湯の中に溶けていくようだ。
しばらく露天風呂を満喫した後、内湯にも入ってみることにした。
前に写真で見たことがある桧の浴室が待っている
はず。
そうそうこれ、ほぼ正方形の木組みの湯船で床は放射線状に組んである。年季の入った木は既に黒々として硫黄成分の白い粉がこびりついている。写真で見ていたとおりだ。
お湯の色は露天風呂とは全然違った。
露天風呂が灰色っぽかったのに対し、緑色がかった乳白色だ。
内湯はえらく良い湯だった。
少し熱めだが入っていられないほどではない。
ゆで卵のような臭いも薬品のような臭いも露天風呂よりずっと強い。お湯にも力があるような感じだ。
飲泉用のコップ(何故かタイムボカンの柄)があるので飲んでみると、ゆで卵のような味にプラスして苦みがとても強い。
見た目も舌触りも粉っぽさのまるでない濁り湯だが、ときどき大きな湯の花が浮かんでいる。こちらの湯の花は黒と白と黄色とあるというが、黄色いものは見つけられなかった。黒い湯の花が数は少ないものの色が濃いのでよく目立つ。
浴室で出会ったのは1時間半ほど離れた場所にお住まいの方で、時々五色の湯旅館に立ち寄り入浴すると教えて下さった。
「ラジウムがね、入っている温泉だからここはよく効くのよ。この辺りには沢山温泉があるけど、なんと言ってもここが一番だと思うの」
あまりにも五色の湯が良い湯だったので、今日は本当は信州高山温泉郷でもう一湯ぐらい入って行くつもりだったが、とてもとてもはしごなんてする気になれなくなっていた。
そのかわり、入りすぎると湯疲れすると知りつつもなかなかこの浴室を出る気になれなかった。
何だかもう、すっかり根が生えちゃった。
ここ、いいなぁ。泊まるには高いけど、お湯は最高。