子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★★ 泉質★★★☆☆ 強塩泉なので長湯に注意
- 設備★★★★☆ 雰囲気★★★★☆ 都心部なのに鄙びた湯治場風に作られているのが面白い
子連れ家族のための温泉ポイント
黒川温泉の人気旅館 新明館や山みず木を経営する後藤哲也氏がプロデュースしたという日帰り温泉「志楽の湯」へ行ってみた。
ターミナル駅であるJR川崎駅から南武線で二駅。あっというまに矢向駅到着。この辺からは温泉銭湯の矢向湯も近い。駅から徒歩5~6分。志楽の湯は住宅地とか、クリーニング店とか、幼稚園とか、そんな中にある。
敷地はすぐに判ったが、駐車場がそのあたりにしては広いというか、建物が奥まっていてわかりにくい。時間も早すぎたので先まで歩いてみると隣に研修所みたいな建物が建っている。宿泊ができるって書いてあったけどこれかな。
この日は月に一度のメンテナンス日で、いつもは朝10時にオープンするところが午後3時から。正直なところ道路から見た駐車場の雰囲気はちょっと空き地みたいで荒れているように見えた。温泉の機械の周りに作業着の人たちが集まっている。
川崎という立地と、山じゃなくて住宅街という周辺環境と、この空き地みたいな駐車場を見て、どうやって黒川温泉に雰囲気を持っていくのかこの時点ではわからなかった。
開館30分前になったので駐車場の中に入ってみた。すると建物と看板が見えた。正面の建物は食事処らしい。温泉棟は右手の小径。まあ10m位しかないんだけどその先。なるほどこれが黒川温泉かと思うようなちょっと古い大きな民家風の建物が建っていた。
柱とか壁の木の板なんかが使い込まれた風に黒ずんでいて、木の梯子やらムシロやら竹ぼうきやらが立てかけられていたりする。
ああ、この雰囲気わかるわぁ。やっぱり黒川温泉の新明館グループの耕きちの湯あたりもこんな感じだった。
だんだんオープンを待つお客さんが増えてくる。こじゃれた温泉棟の雰囲気とは裏腹に地元の年配客ばかりのようだ。今風の日帰り温泉だけど、下町の銭湯に通ずるものがある。
水曜日は女性客に割引券が出るようで、あたしゃ水曜しか来たことが無いとか豪語するおばちゃんもいる。今日がメンテナンス日と知らず、なんでまだ開いてないんだ?といぶかしがるおじさんもいた。
5分前になると、係りの男性が回ってきて玄関前に暖簾を掛けた。暖簾もよくある温泉の暖簾じゃなくて海老茶の柿渋染め。洒落た織りの荒い麻地でやたらと縦に長く下がるタイプ。もちろん無地。
一番最初に受付を済ませ、さっさと浴室へ移動。
浴室へのアプローチもいったん屋根のある外の回廊を通るようになっている。これもまたいろいろとこだわりを感じる造り。
脱衣所も床やロッカーがあえて擦り切れた感じになっていた。洗い場もそう、古くないのにあえて湯治場のような雰囲気に作ってある。板張りの部分はみんな渋墨塗り。
案外天井も高く感じられる。
後から気付いたが洗い場に至る通路の床のコンクリは何やら縄文土器風の文様が付いていて(縄文天然温泉だから)、足つぼマッサージにも効くとかなんとか。
お風呂は左手に大きな味噌樽の浴槽。これは無色透明でえらく塩素臭かった。井戸水かな?
右手は壁まですっぽりぴっちりと浴槽になっていて、その一部がソラマメ型・・・いや勾玉型の小型浴槽になっている。薄暗いので色ははっきりしないが黒っぽい茶色に見える。
勾玉湯と蔵石風呂って言うようで、粘土を盛り上げて作ったような浴槽の縁の部分はあの黒川温泉新明館の赤石を使っているそうだ。
勾玉湯はかなりぬるめで、逆に蔵石風呂はかなり熱かった。
露天風呂もある。洗い場の手前に露天風呂のドアがあったのでそっちも行ってみた。
ドアは開けると自動で閉まるようになっているんだけど、それも電動じゃなくて錘がぶらさがっていて閉まるようになっているのが面白い。
露天風呂は決して広くは無いが、これもまた黒川温泉、特に山みず木をイメージさせるお風呂だ。奥の方に四阿があるほかは普通の露天風呂だけど、よくある日帰り温泉や旅館のように塀が竹垣ではなく、ここも雨風にさらされた風な渋墨の板張りで、支えのように流木を使った不揃いな丸太がいくつも立てかけてある。
植えられている木も手入れされた庭木ではなく、里山に自然に生えた雑木風。
あー、わかるわかる、黒川温泉趣味だ、これ。
曇りだったとはいえ、午後3時の日差しの下で露天風呂のお湯の色はよく見えた。濃い琥珀色。透明感あり。たぶん内湯の蔵石風呂や勾玉湯も同じなのだろう。
しかし足を踏み入れて・・・えっ、なんかすごく活きがいいんですけど。げげっ、もしかしてめちゃくちゃここって侮れない系?
ジェルを引いたみたいにぬるるんと妙な肌触りもある・・・と思ったら、びっしりと泡。そのさま凄まじく、七里田温泉の下ん湯とか、筌ノ口温泉の山里の湯とかを髣髴とさせるレベル。うっそぉ!
においは甘い植物系。どちらかというとぬるめだけど、40度ちょっとはあると思う。なのにこんなに泡が抜けてないとか。まさか人工炭酸泉じゃないよね?どこにもそんなこと書いてないよね?
とにかく濃いんだけどものすごく陶酔感のあるお湯といいますか、やっばいやばい。
湯口は上から竹筒で入れているところと、下から注入しているところがあり、当然ながら下から入ってくるところの側は特に泡付きが激しい。いや、そこから離れてどこに入っていてもすんごいアワアワシュワシュワだけど。
露天風呂の横に植えられた木の枝にウグイスのつがいがやってきて、並んでとまり互いに羽づくろいしている。仲良さそう。
いったん中のお風呂に戻ってみたが、露天風呂ほどに活きは良くない。だからまたすぐ露天風呂に戻って来た。
結局1時間ぐらい露天風呂に入っていた。
でも何だかその頃、お湯にも変化が。
なんというか、鮮度感が急速に薄れてきたような。気が付くと竹筒のお湯が止まっている。中から注入されている分は出ているけど。
泡も減った。だからぬるるんとせずにきしつく。においも甘い感じが薄れて、お湯そのものからはにおわないけど、浸かっていた手や腕のにおいを嗅ぐと、つーんと来る。これはアンモニアだ。
実はメンテナンス直後で機械やパイプをクリーンにして、開館時間に間に合わせるようにドバドバ源泉を爆投入したこの日・この時間だからこその源泉状態だったようで、普段は残念ながら循環して泡なども付かない模様。
超新鮮生源泉大盤振る舞いが体験できた私は非常にラッキーだったようだ。