子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★★★☆ 洞窟風呂はそんなに熱くない
- 設備★★★☆☆ 雰囲気★★★☆☆ 洞窟風呂を面白がるか怖がるかはその子に寄るかも
子連れ家族のための温泉ポイント
黒川温泉の観光案内所である風の舎から急坂の石段を下りて、昨日カレーを食べたわろく屋の前を通過し、最初の橋を左へ渡る。
新明館はわろく屋などの食べ物屋が並ぶ通りの川向いにあるのだ。
その渡る橋が既に新明館の一部だった。
新明館にのみ通じている橋なのだから当然なのだが、橋が建物と一体化し、橋を渡り始める時から既にそこは新明館だった。
新明館は川向こうのごく狭い場所に、川に身を乗り出して張り付くように建っているように見える。
瓦屋根の軒下には日本秘湯を守る会の提灯。
入り口には干した玉蜀黍や、蓑と傘が下がり、壁は渋墨で黒く塗られている。
新明館のお風呂が有名なのは洞窟風呂になっているからだ。
単に洞窟の中にお湯を張っているだけなら、千葉の養老温泉新川とか、長野の七味温泉紅葉館とかすぐにいくつか思いつくけれど、この新明館が特殊なのは、館主自らが3年半掛けてノミ一本で彫り上げたという逸話があるからだ。
いやこれとんでもないでしょうよ。執念でしょうよ。一人でノミ一本とか。
だから結構小さい洞窟なんだろうとたかをくくっていたらとんでもなかった。
勝手に洞窟がひとつある形をイメージしていたら、全然違った。
迷路というのはさすがに大袈裟だが、三角形に通路がある感じで、入るとすぐに道が二手に分かれて、片方に進むと角があり、曲がるとまた角があり、結局直進し続けると一周する仕組み。
そして川に近い方の角の所に脱衣所があると思ってもらえばいい。
脱衣所も洞窟の一部のようなワイルドな作りで、足元に簀子、壁際に籐の籠を乗せた木のベンチがあるだけの簡素なものだったが、自分が使っている籠以外は空だった。
なのに中から声がするので変だと思ったら、奥の方のもう一つの角の所にたぶん館内から続く脱衣所があるようだった。
きっと宿泊者用の脱衣所なのだろう。
そして残る角の所に宿泊者と思う入浴者二人がどっかりとスペースを取ってひたすらしゃべり続けていた。
いやもう本当にずっと。
私が入っている間中、ずーっと話し声が洞窟内に響いていたから。
お湯は適温。
川に近い角に湯口というか岩からお湯が出ているところがあり、その湯口とお湯の流れるところは赤茶色に染まっている。
特に湯口からお湯が垂れてくるところは析出物が固まっている感じ。
洞窟なのでミストサウナ効果がある。
足元もごつごつ。手作り感半端ない。
お湯のにおいはほとんど感知できない。
あれっ、ちょっと焦げたにおいがするな、でも湯口からじゃない・・・と思ったら、それは外の囲炉裏から流れてくる煙のにおいだった。
でもまあ湯口の近くはごくわずかに金属っぽいにおいがするようなしないような。
お湯そのものよりも洞窟の佇まいの方がインパクトが強いお風呂だった。
明るいところで新明館のお湯を見ると、僅かに白濁して、浴槽の底などお湯の触れている部分がどこも見事に赤茶色に染まっているのが判った。
というわけで、新明館の洞窟風呂は体験する価値がある。
やっぱり凄いなぁとしみじみ思う。