時間はまだ3時前だったので、泊まる月岡温泉入りする前に五頭温泉郷にも寄ってみることにした。
五頭温泉郷は五頭山麓に点在する出湯温泉、今板温泉、村杉温泉の三つの温泉地を総称した名だ。今板温泉は湯本館一軒のみだが、出湯温泉と村杉温泉はそれぞれ数軒の宿と複数の共同浴場がある。
場所的には月岡温泉を通り過ぎた先にあるから、今日は月岡温泉に近い出湯温泉の共同浴場に入ってみようと思う。ここの共同浴場は華報寺共同浴場と出湯共同浴場の二軒。
出湯温泉は小ぢんまりとしていい感じに鄙びた温泉街。
昨日寄った湯田川温泉よりも山あいの雰囲気だが、初日の台温泉ほどではない。
入ろうと思った華報寺共同浴場は蒲原三十三観音札所巡りの二十番札所である華報寺のすぐ隣に建つ古びた共同浴場。
外観は歪んでいてすぐに崩れそうに見えるほど。
入口屋根部分に書かれた文字は「張 泉 窟」で、もしかしたら間に何文字か抜けているのかも。
とにかく最初はここが華報寺共同浴場だとは思わなかったほど、外観はわかりにくい。
自販機で入浴券を購入して受付に出す方式。
受付に貼られた張り紙には「滝のお湯は飲用の許可を得ていませんので自己責任でお願いします」。
中はとっても混んでいた。地元の人がほとんどだと思うが若い人もいる。
掛け湯槽みたいなところに筆の文字で貼紙。ここのお湯で掛け湯をするな。浴槽のお湯を汲んで洗えと。
お風呂は四角くお風呂にも注意書きがある。
真ん中から出ているお湯をまたぐな、お尻を乗せるな、弘法大師様の下さったお湯だからと。
それを読んで見上げると、男湯との境の壁の上に弘法大師様の像が立ってお風呂を見下ろしていた。
ところでこの像のあるあたりの角に黒い岩を積み上げた湯口があって、そこからお湯が落ちてきているので最初は真ん中の湯口に気付かなかった。
ハッと気づくと下から何か。
しまった、知らずに弘法大師様のお湯にお尻を載せていたかも。禁忌を犯した。やばっ。慌ててどく。
何で上と下から入れてるんだろうなと思ったが、岩を伝ってくる湯口は最後のところに焼酎のペットボトルの口の部分を切り取ったようなものが据え付けてあって、そうすると岩を伝ってきたお湯が最後のところで岩と離れてボトルの口から出てくるようになる。なるほどこうするとお湯を汲むことができるわけだ。
一方、下から出ている分は、もちろん下から出ているから空気に触れずにアワアワ。
お湯の温度はぬるめで体温よりちょっと高いくらい。しばらく入っていると全身が泡に包まれる。
同じ宗教入ってても、西方の湯と違って怖くない。というか、むしろとても癒される。
西方の湯のあの症状が湯あたりだとしたら、さらに温泉に入っているのだから悪化しても不思議はなかったが、華報寺温泉では逆に収まっていったように思う。
あと、ここの浴槽は段差が無くて、入る時にいきなり深くなるのでびっくりした。お湯自体はほぼ透明なんだけど、底の一部に水色の色がついているため、そこに段差があると錯覚するんだよね。紛らわしい。
においは淡い。すぐに他の人のシャンプーのにおいにかき消された。
いつまでも泡と戯れながら入っていたい温泉。みんな長湯をしているわけだ。
ぬるめの、でも冷たくはない温度のアワアワのお湯が湧いているのは幸せなことだ。