子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★☆☆☆ 泉質★★★☆☆ お湯は熱め、岩風呂が深いので注意
- 設備★★★★★ 雰囲気★★★★★ ベビーベッドあり、家族風呂は加水自由なので子連れにお勧め
子連れ家族のための温泉ポイント
鄙びた山あいの蛇行する細い道沿いに、湯治宿と思われる煙ですすけた古い小さな宿が並んでいる。群馬の四万温泉よりもずっと素朴で、山口の俵山温泉よりもずっと山深い。
いいねいいね、こういう雰囲気大好き。
ようやく中嶋旅館の駐車場を見つけた。道の右側だ。そしてその隣に中嶋旅館が建っていた。ここにきて初めて中嶋旅館の外観を見た。そりゃ凄かった。何だかそこだけ時代が違った。
聞けば築100年近くの木造4階建てだと言う。
手前の湯治宿がほとんど2階建ての低層だったからなおのこと、斜面を背にして立つその威風堂々とした姿はひときわ目を引いた。
中嶋旅館は館内も予想以上だった。
玄関、廊下、階段・・・大正か昭和初期の雰囲気がそのまま残っている。そしてとても綺麗に手入れがされている。正直なところ、古いだけの旅館というのは時々ある。メンテナンスの費用が捻出できず、そのままぎりぎりで経営しているような。
中嶋旅館は古いけど古いだけでない。隅々まで綺麗だし、気が付くと窓が二重窓だったり冷暖房と送風機を併用していたりと目立たないところに快適な滞在ができるような工夫がされている。
いや、料金を考えたら破格でしょ。とても好みだ。こんなに何もかも気に入るところはそうない。あとはお風呂と食事がチェックポイント。
通された部屋は入口に暖簾が掛かっていたのも気に入った。
それに座布団の横に肘あてがあったり、二間続きで既に寝室には布団が敷いてあったが、その寝室の入口にもロール式の古風な御簾がさがっていて何だか時代劇の世界に迷い込んだよう。
さて次はいよいよ中嶋旅館のお風呂だ。
ようやく誰もいなくなかったようなので入ってみる。入口に瑞岩乃湯と大きな看板がある。
瑞岩乃湯には天然岩風呂と大理石風呂があって、この時は大理石風呂が女湯だった。
浴室は1階からさらに階段を下る。脱衣所からもさらに階段を下る。地下にあるせいか、館内でもここだけは特に古く湿った感じがする。
最初に驚いたのは天井部分。天井近くだけは向かいの男湯側と繋がっているが、デザインが何故かギリシャの建物みたいになっている。
中嶋旅館の外観やお風呂そのものは和風なのに。
実はこのデザイン、先代のご主人が全てデザインしたそうだ。道後温泉に行ってひらめいたらしい。現ご主人はなんでこんなデザインにしたんでしょうねと笑うが、私はユニークで好きだ。
浴槽は長方形で縁は大理石。
浴室全体が薄暗く霞んでいるのでお湯の色や湯の花はわからない。無色透明に見える。
掛け湯をするとかなり熱いお湯で、入るのに躊躇したが入れないほどではなかった。
湯口のお湯はたらたらとそんなに量は多くない。
きしつくが、入っているうちにするするしてくる。重曹が入っているような感触。
においはマッチでもゆで卵でもないタイプの硫黄系のにおい。既に傷んでゆで卵っぽくなくなったというか、そんな感じ。
ちなみに中嶋旅館は加水・循環とネットでは書かれていて、それは分析表に加水・循環が記載されているからだと思うのだが、後で女将さんに確認した話では、加水無し。三つあるお風呂のうち岩風呂(この時男湯だったところ)のみ深いので必要量が多くお湯を貯める時だけ循環。全部のお風呂で湯口から注がれている分は源泉のみの掛け流しとのことだった。
源泉は台温泉2号泉。昔は岩風呂のすぐ横で湧いていたというので独自源泉もあったようだが、今は共同管理の源泉を引いている。
食事は部屋食で6時半ごろ。
正直なところ、GW前で一泊二食で一人8千円台、あまりにも安いので食事はそれなりかなと覚悟していた。
ところがどっこい。とても美味しいのだ。8千円台のプランはビジネスプランと言って、通常より品数が1~2品少ない設定らしいが、品数も十分。料理のレベルは1万5千円ぐらいの宿と比較してもまったく見劣りしない。というか、他より良いと思う。
このGWの旅行で東北から新潟にかけて5泊したが、食事はここが一番だった。食事だけじゃなくて建物も一番だが。
食後は男女の浴室が交代になったのでもうひとつの天然岩風呂へ。
こちらも脱衣所から地下に降りるのは同じだが、浴槽が全然違った。石を積み上げた風の岩風呂で、浴槽自体はさっきの長方形のお風呂よりずっと大きいと思う。
熱めのそのお風呂に足を踏み入れると、底も平らではなく、そして深い。ものすごく深い。
一番深いところで90センチあるというのを知ったのは後からで、他に誰も入っていない薄暗い地下の浴室で、足を滑らせたらどこまで深いかわからないお風呂にそのまま沈んでしまいそうで、思わずびくびくしながら縁の方に留まった。
実はこの岩風呂、お風呂として外から運んで設置したものではなく、なんと中嶋旅館の建物の下に埋まっていた岩盤そのものをくりぬいたもの。
深いのも、この辺りのお風呂は昔はみんな地下に立って入るような深いものを作るのがスタンダードだったけど、そうすると深い分お湯の容量も必要だし、今はみんな作り替えて浅いお風呂になっている中、中嶋旅館はずっと使い続けているというものらしい。
湯口は上と底の方にあって、温度調節のために二ヶ所から入れているということだった。
とにかく知らずに普通に入ると「おおっと」と溺れそうになるので注意。子供だけとかでは絶対に入れちゃいかんかも。でも面白いよね。
まあ、そんな岩盤でできたお風呂なので、震度3ぐらいの地震では、なんと揺れてることにも気づかないという話だった。