子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★☆☆ 泉質★★☆☆☆ 泉質は塩分が濃いので長湯注意
- 設備★☆☆☆☆ 雰囲気★☆☆☆☆ 一般の人は子連れで行かないと思います
子連れ家族のための温泉ポイント
新潟にとてつもなく臭(くさ)いと噂の温泉があった。私はとにかく臭いにおいに弱い。ホントに無理。誰か私の風上でクサヤやキムチを食べたら泣きながらグーパンするレベル。
だから西方の湯に興味はあれど、行くのは本当に怖かった。びびっていた。行ってもあまりの臭さに吐いたらどうしようとか、マジで悩んでいた。
でも一方、今は源泉が変わってそんなに臭くなくなった(でもまた少しは臭い?)っていう話を聞いていた。ちょっとホッとする。残念だなって思う反面、やっぱり「助かったー」って思う。だって臭いにおいはどうしても無理だから。
しかしこの西方の湯、ある意味この日のおもしろハイライトだった。入ってきた私の話を聞いて、車で待っていた夫は笑い転げて次の行き先のチューリップ畑をすっ飛ばしたほどの。
臭さが緩和されても十分にインパクトのある温泉だってことだ。マジで。
海岸通りを走って、近づくと見えてくる親鸞聖人の巨大な立像。これだけでヤバそうな雰囲気。
なんかカンフー映画に出てきそうな廃寺みたいな門があって、そこが入口かと思ったけど真ん中に三角コーンが置かれて塞がれている。
この門の真正面に立つと門の上から親鸞聖人の首から上だけ突き出していて恐怖を感じる。
奥に別の入口があってそこから入ると、写真などで見覚えのある西方の湯と書かれたコンクリの建物があった。老朽化している。
車が何台か停まっていなかったら、昼間でも入るのをためらいそうだ。
私一人で車から降りる。くっさいにおいが外まで漂っていたらどうしようかと思ったが、特にそんな様子は無く、しかし廃墟然として、ひと気が無い。
館内に入って最初にヤバいと感じたのは無駄に広いロビーに引っ越し前のように大量に調度品などが置かれていてそれらに埃が積もっていたこと。壺とか、ケースに入った人形とか、飾り大皿とか。
そして広いロビーには電気がほとんどついていなかったのにフロントには愛想の無いおばちゃんがいて、料金を徴収したこと。そのうえ他に人のいないロビーにやけに明るく古臭いナツメロ音楽が流れていたこと。青春時代みたいな感じの曲。
ロビーから二階に上がる赤じゅうたんの階段もあるが埃まみれで通行止めになっている。浴室に至る廊下の右手には宿泊施設があったころに使われていたような蓋つきの椀や徳利、湯のみ、小皿といった食器類がうずたかく積まれ、全てが埃をかぶっている。
左手には厨房があり、つい昨晩まで料理を作っていたのにいきなり神隠しにあって、そのままだれも帰ってこなかったような感じになっている。
脱衣所も何か違和感を感じる造り。ラブリーな籐のテーブルセットが置いてあったり、なのにほとんどの脱衣棚がジムみたいな金属製のロッカーだったり、統一感が無い。脱衣所の清掃は行き届いている。
脱衣所の窓から外を見ると石灯篭などが置かれて藤棚が屋根になっている岩の露天風呂が見えた。湯気の上がる濁り湯が入っている。ぎりぎり水平線も見える。
なんだ、心配して損した。感じの良いお風呂じゃん。どこかホッとする自分。
でもその隣にはお湯の入っていないもう一つの浴槽が見えて、お風呂を見下ろすように岩の上に二体の仏像。何だか恐山みたいな雰囲気。
でも驚くのはまだまだ早かった。
浴室に入れば鼻が曲がるほどのにおいがするかと思ったが、そうでもなかった。
少し重めな油臭で、いいにおいとは思わないがこれを臭いというなら自分比較でつなとり温泉の方が臭かった。もっと排泄物みたいなにおいがするのかと思っていた。
浴室は思ったより広く、全体的にミストで霞んで見える。
柱や壁がピンク色に塗られているのがB級感を促進させる。お風呂は二槽に分けられていて、手前は「ぬるめの湯」と書かれていた。鶯色というか、古茶みたいな緑濁のお湯が入っている。
腕と脚に少し掛け湯したところで、ふとさっきの露天風呂に先に行ってみようと思った。
ちょうど横にドアがある。これを開ければ・・・
あれ?開かない。ドアノブには真ん中にひねるタイプの鍵がついていたが、これがくるくる回るばかりで効かなくなっている。鍵が開かないからドアノブは石のように回らない。ちょ、なんだこれ、ブラフ? なんかの罠ですかい? 開かずの露天とは意表をついてくる。
と、そのとき!
腕と脚にまるで沢山の針でつつかれたような痛みが走った。チクチクチクチクチクチク。
腕や足に大量の虫が取りついていっせいに刺し始めたような異様な痛み。あまりの気持ち悪さに思わず悲鳴を上げそうになる。
見ると肌が赤くなっている。そこに触ると、まるでセメダインでもついているかのようなペタペタとくっつく感じがある。
そういえば腕と脚って、さっき掛け湯したところじゃないか。恐怖のあまり両腕を抱え込む。なんなんだ、このお湯はーッ。
・・・
ようやく少し落ち着いたところで、もう一度掛け湯して(また針でつつかれるの嫌だなぁ)、そーっとぬるめから入る。
掛け湯した時に少し臭さがわかる。
入ると、このにおい、なんなんだろう。油ベース、そんなひどく臭くはないけど、古い工場に入った時の古い油のにおいというか・・・。
入る時もやっぱり全身チクチクした。
ここまで来たらどんと来い。あつ湯にも入る。
こっちもチクチク。玉川温泉のピリピリしみる感じとは全然違う。あっちは皮膚の弱いところ、薄いところが傷むけど、この時は鎖骨のあたりが痛かった。もちろん熱いお湯の刺激とも全然違う。
入っている間中、なんとなく恐怖に襲われて落ち着かなかった。
宗教・廃墟っぽさ・得体のしれないお湯とトリプル攻撃だよ。
さすがの私も上がる時にシャワーで全身のお湯を落としてしまった。
湯上りにトイレに寄ったら、トイレの全てのドアが閉まらなかった。全部枠が歪んで傾いているみたい。
帰りにフロントのおばちゃんに露天風呂に出られなかったと言ったら、「あれは上がり湯」だと言う。は? 私の知っている上がり湯は、入れない露天風呂のことじゃないが。
「じゃああそこに入っているのは温泉じゃないんですか? 湯気が上がっていたけど」
「温泉だよ。でも露天風呂じゃないからドアは開かない」
「???」
何から何まで衝撃的な西方の湯だった。
※なお、温泉の感じ方には個人差があります(私の症状は湯あたりの可能性が高いです)。露天風呂も夏期はオープンするらしいです。