22.四番湯 竹の湯
そろそろ終わりが見えてきた。
もう石畳の町はとっぷりと日が暮れ、ノスタルジックなオレンジ色の街灯が狭い通りを照らしているのみ。
人通りも少なくなり、時代劇の世界に迷い込んだような雰囲気だ。
今朝のウォークラリーで問題も出題されていた
竹の湯到着。四番湯になる。
自分が廻っている順番から言うと、八番目だ。
慢性痛風に効くとされ、
地獄谷から木の管で引き湯したという。
ここが地獄谷からの引き湯だとすると、ひとつ前に入った
松の湯も地獄谷だろう。この二つのお湯は双子のように似ている。
ここでもやはり病院臭がした。
他の外湯では、水を出したら上がるとき止めていけという表示があるのに対し、竹の湯は逆で、上がるときに湯口に板をはめ、湯を止めて行けと書いてある。
川原湯温泉の王湯でやはり水道水を止めるなといった表示を見たが、要するにお湯を流れるままにしておくと熱すぎて入れないということなのだろう。
先客は指示に従いきっちりお湯を止めていったようだ。
熱いが困るほどの温度ではない。
湯船に入って板を外した。
熱い湯がとくとくと流れ込んできた。
新鮮なお湯が入ってきたところで、ようやく病院臭が何であるか判った。何であるかというか、つまり知っている臭いに置き換えることができたのだ。
硫黄の臭いだった。普通はゆで卵みたいな臭いなのだが、ここのは相当焦げているので、焦げ硫黄の臭いを病院のような臭いだと感じたのだ。
ふうむ、面白い。
湯の色は無色透明で、ほんの少し細かい湯の花がある。
味は薄いゆで卵風のわずかな塩味。
ちょうど出ようとしたときに地元の人が一人入ってきた。
どこに泊まっているのか聞かれて
安代温泉だと伝えると、安代より渋の方が温泉らしいお湯でしょと言われた。
確かに色や湯の花、臭いなんかは渋の方がはっきりしていて判りやすい。
それだけが温泉の良さだとは思わないが、こちらを好む人の方が多いだろう。
安代温泉は金気臭より出汁臭で、オイルの肌触りがある。どちらかというと、
湯田中系のお湯だ。