5.冬の清津峡小出温泉
1日快晴だった昨日と違い、昼過ぎには雲が増えてきた。
それでもまあまあいい天気だ。こんな日は露天風呂に入ったら気持ちいいだろう。
清津峡に決めたつもりだったが実はまだ松之山にも未練があった。
そういえば
松之山の植木屋旅館は自遊人パスポートで無料入浴ができるはずだ。年末年始のパスポート使用不可期限は今日までだが、宿泊客のピークは昨夜で終わり、もしかしたら受け付けてくれるかもしれない。
県道80号線への分岐を通過しながら携帯から電話を掛けてみた。
ご主人が出て、「今日までは使えないんですよ」
やっぱり駄目か。
植木屋旅館は次回の課題。
信濃川沿いに出ると少し開けた感じがある。
昨日の
ミオンなかさとに行くときも思ったが、正面のひときわ白い山は何処の山だろう。苗場山?
清津大橋を渡って信濃川の支流、清津川を遡る。
この川の上流に日本三大峡谷のひとつ、清津峡がある。
ちなみに残る二つは黒部峡谷と大杉谷だ。
清津峡トンネルを抜けて橋を渡ると、やおら雪道は細く心許なくなってくる。
右手はそそり立つ崖、左手は切り立つ渓谷だ。
すれ違う車の影も無いのが幸い。とても狭い。
本当にこの先に温泉地なんてあるのだろうかと思った頃、道の終点に到着した。
ごく小さな温泉街があり、入り口に地図が出ていた。
目指すはtakayamaさんがお勧めの
苗場館。
地図で見ると最奥らしい。
一度車で奥まで行ってみようとしたが、湯元旅館清津館の前まで行って引き返さざるを得なかった。そのさき道は、歩くのがやっとという広さまでしか除雪していない。というか、この先に建物などあるのだろうかという感じだった。
仕方がないので一人で車を降りて様子を見に行くことにした。パパは車を温泉街入り口の駐車場に停めてくると言う。
雪かきしてある道に従って進むと、旅館と言うには小さな建物が待っていた。
湯元・食堂 苗場館。
旅館だとばかり思っていたが、苗場館は食堂だった。道に面した建物は平屋建てで、二階部分が露天風呂になっている。渓谷からは道を隔てているので露天風呂の眺めはあまり良くないかもしれないと思っていたが、これなら景色がよく見えるだろう。
しかし何となく来客を拒否している雰囲気がありどうしたものかと逡巡していると、タイミング良くドアが開いて小柄なご主人が出てきた。
「冬は休業です。除雪に温泉を使っちゃうのでね」
豪雪地帯だから温泉は除雪に使い切って終わりなのか・・・。な、なるほど。
見上げると二階部分の露天風呂からはほんのりと湯気が上がっているようす。入りたかったな。
「立ち寄りならそこの
よーへりでやっているから」と、取り付くしまもない。
さっき清津館の前で車を停めたとき、道向かいにあった建物のことらしい。
苗場館の先はもう車で入れる道はなく清津峡渓谷トンネルに続いている。このトンネルは全長750mで中は4箇所の見晴らし台とビデオやパネルで清津峡の自然を紹介するコーナーになっている。残念ながら冬季は閉鎖だ。
引き返すしかなかった。
駐車場まで戻ってみると、パパたちが待っていた。
駐車場の足下はびちゃびちゃで、よく見るとコンクリの間からお湯を出して融雪している。苗場館の温泉などこういうところで使われているのかもしれない。