さて、いよいよ旅のハイライト、黒川温泉に向かうのだが、そもそも私が初めて黒川温泉という場所を意識したのは今から12年ほど前だった。
その頃私は子連れ温泉ガイド地熱愛好会のウェブサイトを立ち上げたばかりで(もう12年もやってるのか!?)、温泉関係の情報を発信するならいろいろ知らないとと思い、刊行されたばかりの「温泉主義」という雑誌を購入してみたのだ。
温泉主義は温泉学教授として名を馳せた松田忠徳氏のプロデュースによる、B5版、しっかりした紙質の120頁ほどの冊子で、創刊号の特集は黒川温泉だった。
2号の特集が長野の野沢温泉で、3号でまた黒川温泉と近所の
湯布院温泉だった。
東京に住んでいる私にしたら、正直なところ九州に肩入れしすぎだろう・・という印象だった。
ちなみに私が買ったのは3号までだったが、5号のサブ特集でまたもや九州の別府を取り上げていた。
そして残念ながらその5号で廃刊になってしまった。バックナンバーは今もくまざさ出版で取り扱っているようだが。
で、前振りが長かったが、その温泉主義創刊号の黒川温泉特集の冒頭には、「鄙びてはいるが、それでいて田舎臭くなく、活気がある」とある。
24軒のうち3軒の旅館の露天風呂を選んで回ることのできる入浴手形があり、一軒一軒が個性的だとも書かれている。
もうひとつ印象に残ったのは人工的な庭園ではなく、雑木を、広葉樹を植林し、しかもそれがわざとらしくなく、自然に見えるように作ったというエピソード。この話を読んだときに「
山みず木」という宿名も頭の中にインプットされた。
なお、この温泉主義創刊号の表紙の裏は
長湯温泉のガニ湯だった。
連載企画には「湯布院・長湯・交換日記」という頁もあった。
そういえば私が長湯温泉を知ったのもこれからだったかもしれない。
やっぱり九州の温泉にえらく偏っている。