6.四万温泉伝説の御夢想の湯
入り口を入ると男女別の脱衣所に分かれる。脱衣所も狭く古そうだ。脱衣籠もなく棚だけだ。
浴室のドアを開けると、外観からは想像もつかない木造りの感じの良い浴室が待っていた。湯口のところが白っぽく盛り上がっていて、遠目にはまるめた手ぬぐいでもおいてあるのかと思ったら、湯気が消えるとそれは鍾乳石のようにごてごてと芸術的に固まった析出物だった。
河原の湯と同じで何段か階段を降りて湯船に至る。
3人くらいでいっぱいの木の浴槽と、プラスチックの洗面器。他には何もないシンプルな施設だ。
降りていってお湯の温度をみようと手を入れてみれば…
激熱!!。
ここまで熱い湯は久しぶりだ。
いやはや、人間が入れる温度ではない。入れた手がじんじんしている。とてもとても子供の入浴などできない。
見れば壁にひとつだけ蛇口があり、短いホースが繋いである。
基本的には水でうめるのはご法度だが、いくらなんでもこのままでは入れないのでとにかく少し冷やすことにした。
何しろ床に立っているだけで、掛け流されてくるお湯で足の裏が火傷しそう。
子供たちは女湯についてきたので、二人を脱がせたりしている分遅れをとっている。壁越しにパパが男湯は適温になったと声を掛けてくれる。
子供たちは男湯に移すことにした。
先月訪れた福島の
沼尻温泉でも、男湯の露天風呂は激熱だったとパパが言っていたが、今日の
御夢想の湯に比べれば温かったと後からパパの弁。
やっと女湯も入れる温度になったので、そろそろと体を沈める。
これは吃驚。
オイルの臭いがする。
四万温泉でアブラ臭のするお湯があるとは思わなかった。
それも石油・灯油系の臭いではなく、淡いながら柑橘系・機械油系の華やいだ臭いだ。加えてちょっと海苔の佃煮みたいな臭いも混じっている。
石膏泉らしく、湯中ではきしきしとするが、上がるとぬるぬるするのも驚きだ。
アルカリ・重曹のにゅるにゅるではなく、オイル系のぬるぬる。
羽根沢温泉や
有馬療養温泉みたいな感じだ。臭いとあわせて、オイルの働きだろう。そういえばここは木の床も、木の浴槽の底もとてつもなくよく滑る。実はカナもレナも入ってきてから一回ずつ転倒した。床は石ではなく木なのでダメージはほとんど無かったが、流れてくるお湯のオイル成分で、ちょうどワックスを引いたみたいになっているのだ。