子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★★ 泉質★★★★☆ 湯温は温め、泉質はアトピーにも効果あり
- 設備★★★★☆ 雰囲気★☆☆☆☆ 脱衣所の長椅子が赤ちゃんの着替えに使える、和室の休憩室もある
子連れ家族のための温泉ポイント
有馬といっても兵庫県の有馬じゃない。東京のお隣、神奈川県の川崎にも実は有馬の温泉があるのだ。
新しくお湯を張った朝一番のお風呂には不思議な黄金の膜が張るという有馬療養温泉に行ってみた。日帰り入浴受付の11時を少し回ったところで、もう膜は無かったけれど、印象的な赤茶色の湯面一面に油膜が浮いていてびっくりした。
今から千三百年以上前に役小角(えんのおづぬ)が泉源を発見し、千二百五十年前には阿部内親王(孝謙天皇)が療養されたなど、深い歴史のある温泉地だが、今ある湯は昭和四十年代に掘られたものだという。
場所が川崎市と、旅行で行くには近すぎ近所の温泉というには遠すぎ、かつ日帰り入浴料が1,700円からと高額なため、まず行く機会はないであろうと内心思っていた。
それが株式会社カラット発行の「自遊人 温泉図鑑2004」の付録「にごり湯パスポート」を使うと無料で入らせていただけるというので、早速平日に向かってみた。
いつもは家族で温泉に行くため、交通機関は自家用車だが、今回は単独行動だったため、公共交通機関を使用した(ペーパードライバーなので)。渋谷から田園都市線で鷺沼へ急行で17分。ここからバスで5分、または徒歩17分となっている。道順はわかりやすい。駅は出口一箇所、線路を背に国道246方面へひたすら道なりに歩けばやがて到着する。
バス代をけちって歩いてみた。歩き出してすぐに小杉駅行きのバスに追い越される。しまった、やはりバス停で待っていれば良かったか…。
途中で246の高架を潜る。ここまでで道のりの1/4というところ。どんどん道は下っていく。これは往路で歩くのが正解。帰路は上り坂になるからバスを使うことにしよう(バス情報は下にまとめて掲載)。
大人の足でがしがしと歩いておよそ15分くらいで到着。このあたり、有馬温泉通り商店というのだ。
目指す有馬療養温泉旅館は不二家ぺこちゃんの隣。
入り口はかなり寂れた感じ。狭い中に受付カウンタや靴箱ロッカーがある。
パスポートでお願いしますと伝えたら、バスタオル、てぬぐいタオル、ディスポーザブルの透明プラスチックコップを出してくださった。無料でもタオルを準備してくれるところに感動。
入り口の暖簾に「霊光泉」とある。それを潜って脱衣所に入り、浴室をのぞくと…おお、何だか効きそうな湯だ。
いつものようにざばっと掛け湯をしようとして手を止める。
注意書きがある。「浴槽のお湯は汲み出さないで下さい」。
ん? 掛け湯禁止か。それではシャワーで洗ってから…と入って納得。
源泉はライオンの口の部分からたらたらと流れてくる。そしてこのお湯は冷たい。源泉温度が17度だからだ。浴槽内は41度に調節してある。どうやっているのだろうと探ると、湯中の壁の中ほどに穴があって、中で沸かしてそれを掛け流しているらしい。お湯の温度が低くて分量もたらたらと出るくらいだから、貴重なのだ。これをざばざばと汲み出されてしまうと、困ると、こういうことらしい。
お湯はいかにも錆が入ってますという感じの赤茶色。透明度が低く、沈めた手もまったく見えない。表面には油膜が沢山浮いていて、底にはかなり大きな赤茶色の湯の花が沈んでいる。もろいので手ですくおうとするとすぐ崩れてしまう。
臭いは湯面では薄い鉄臭ともっと薄い海水風の臭い。湯口のところではぴかぴかの鉄をこすったような鮮度の良い鉄臭がかげる。
飲専用コップで少し飲んでみると、冷たくてちょっと塩甘さと軽いしゅわしゅわ感がある美味しいお湯。飲む時に鉄の臭いがぷんぷんする。
湯口のライオンの下においてあるのも金属製のコップ。出ているお湯の量が少ないので、ここに溜められるようになっているらしい。常連さんはしきりとこれを頭からかけていた。
お湯の中ではきしきし感もあるが、ぬれたまま腕などこするとすべすべする。たぶん浮いていた油膜の油分の働きじゃないかな。そういえば飲泉すると飲んでいるときはさっぱりとしているのだが、あとから口の中にまったりとした油っぽさが残る感じ。
とても温まるお湯なので、出たり入ったりしていると油膜が全部消えてしまった。私の体にみんなくっついちゃったのかもしれない。
上がった後、帰ろうとすると、ご主人が休憩室にも冷やした源泉があるから飲んでいきなさいと誘ってくださった。休憩室は一階と二階にそれぞれあり、二階の休憩室は整っている(上から二枚目の画像)が、一階は生活感のあるつくり。その一角に冷水サーバーがあり、そこに源泉が入っている。
湯上りの肌はぴりぴりしている。塩泉のようなつっぱり感もある。
この佇まいで日帰り1,700円(当時)。本当にお湯一本で勝負という感じだ。