16.明日の宿はどこに
寝る前にも一騒動。
離れたがらない子供たちは一緒の部屋で寝ると言い出した。
それは構わないのだが、寝る場所が問題。
部屋の中央に下がる電灯の傘に大きなカメムシが入ってしまったからさあ大変。
「カメムシの下はやだー」
「カメムシの下はやだー」
みんなで逃げ回る。
みんなでできるだけカメムシから遠い布団をゲットしようとする。
「夜中に出てこないよね?」
「虫は明るい方、明るい方へと誘われるから出てこないんじゃないの?」
電気を消したら最後、どこへ行くかは判らないとはあえて口にしない。
「大丈夫?」
「大丈夫大丈夫」と私は安請け合い。
結局カメムシは朝には姿を消していたが、子供たちも朝にはそのことを忘れていた。
「yuko_nekoさ~ん、ちょっとお願いがあるんだけど」
子供たちを寝かせた後、玄関前の囲炉裏のスペースに集まる私たち。
実は元々明日にはみんな旅行を終えて帰るはずが、事情があって我が家だけもう一泊伸ばすことになったのだ。
当然宿泊の手配はしていない。
どこが良いか検討するにあたって、旅館にはちょっとうるさく、しかもいろいろ知っているyuko_nekoさんにアドバイス頂こうと思ったのだ。
基本的には群馬県、関越道からあまり離れないなら新潟県まで視野に入れて、前からぜひとも泊まってみたいと思っていたようなそんな宿が良いとパパは言う。
「前からぜひと言うなら、
法師温泉」
日帰りはしたことあるけど、泊まりは憧れ。
「・・・法師って混浴だろ? 混浴は気を遣うから嫌だ」とパパ。
混浴だからこそ、宿泊に価値がある。宿泊すればゆっくり入るチャンスもあると思うが、とにかくパパの気が乗らないのでは仕方ない。
「後は思いつかないなぁ・・・。とにかくいつもの格安宿泊検索サイト
トクー!トラベル 
をチェックする。
「・・・」
一ヶ所だけ気になる旅館が引っかかった。
谷川温泉の旅館たにがわ。
二食付きの宿泊料は我が家としては予算オーバーだが、日頃では絶対泊まれない宿に泊まる料金としてはめちゃめちゃお買い得だ。
・・・ちょっと気になるなぁ。
谷川温泉は水上温泉のすぐ近く。
大型旅館の建ち並ぶ賑やかな水上とは違い、ペンションなどをのぞくと数軒しか旅館は無く、どの旅館も粒ぞろいと聞いている。
yuko_nekoさん同様、旅館にはちょっとうるさい私の両親が谷川温泉はお勧めだと言っていた。
そのかわり、全体的に宿泊料は高め。だから高嶺の花と思っていた。
そこ以外は目に付いた宿は無く、後はyuko_nekoさんがお勧めの宿をひとつひとつチェックしていく。
湯沢温泉の高半、また同じく湯沢温泉の中屋、越後長野温泉嵐渓荘、栃尾又温泉宝厳堂など。
嵐渓荘、宝厳堂辺りになると距離的にも難しいが、どちらにせよその全てが明日は満室か予算オーバーだった。
「たにがわにしよう」
パパはトクーの画面を見てぴぴっと来たらしい。
いろいろ考えた末、明日の予約は旅館たにがわに決まった。
トクーのプランには、貸切露天風呂も付いている。片品からもそう遠くない。
そんなわけで、
湯宿、
片品と来た今回の旅行は谷川で締めることとなった。