パパの分と一緒に入浴料を払おうと、「大人二人」と言ったら「600円」と返ってきた。
きょ、共同浴場にしては高いのね。
そう思って600円×2人の1,200円を払おうとしたら、受付のおじさんに「一人300円の二人で600円」と笑われてしまった。
脱衣所は天井が斜めで、入浴着にご理解をというポスターが貼ってある。
乳ガンで乳房を切除した人などが、周りを気にせず入浴するための入浴着というものがある。
これを啓蒙するためのポスターだ。
誰もが他人を気にすることなくリラックスして温泉に入れるように。
浴室は細長かった。
浴槽も長方形で、二箇所に湯口がある。
と思ったら洗い場の近く、奥の方にある湯口はカランで使われなかった余ったお湯が浴槽に流れ込むようになっているのだった。
・・・ということは、カランのお湯も源泉だ。
そう言ったら、yuko_nekoさんは、「そうでなきゃ、あんな勿体ないカランの造りはしないよね」と同調した。
がっちゃんがいたく気に入った大湯のカランはちょっと独特の造りで、常にお湯が流れている溝を、板を回して止めるようになっている。
止めなければ溝からお湯が絶え間なく流れ落ちる仕組みだ。
その数少ないカランは全て使用中だった。
朝一番ならいざ知らず、もう
山田温泉大湯は大勢の入浴客で混雑していた。
パパの言ったとおり、お湯は熱かった。
掛け湯をして入ると、最初はかなり熱く感じた。
でも流石に
草津時間湯だとか、早朝の
飯坂温泉鯖湖湯だとか、温泉卵じゃなくてかたゆで卵になっちゃう
小野川温泉尼湯だとか、私が入った歴代熱湯温泉と比較したら大したこと無い。
入ってしまえば落ち着く程度の熱さだった。
お湯の質は泊まっている
松川渓谷温泉にちょっと似ている。
ほとんど透明なお湯で、消しゴムかすのような白い湯の花は松川渓谷より細かい。
すっきりさっぱりした感触で、やはりきしつく旗触り。
意外にそれほど一気には温まらない。
体感温度が他より熱かったから反対にそう思うのかも。
浴室は建物外観の歴史を感じさせる印象を損なわず、昔からずっとこんな風に愛されてきた温泉なのだとそんな風に思った。
とにかく混んでいるのだ。
観光客だけでなく地元の方も多い。
なお、この大湯から道を挟んで少し下ったところに、もうひとつ共同浴場らしい建物が建っているが、がっちゃんの話によるとこちらは地元の方専用なのだそうだ。
熱すぎると言って早々にyuko_nekoさんが上がってしまった後も、私はしばらく入っていた。
地元の方々は私よりよっぽど長風呂だ。
いつまでも浴室にいる面々は変わらない。
但し、お湯が熱めなのでお風呂の中に入っている人は少ない。
みんな浴槽をぐるりと囲んでお風呂に背を向け、ひたすらおしゃべりに興じていたりする。
これがきっといつもの山田温泉大湯なのだろう。
お風呂上がり、大湯の正面にある足湯のある公園に目をやったものの、みんながそこで涼んでいるとは気づかず、私は一人で駐車場に続く坂を上がっていった。
とっくに上がったはずのみんなは車にはいなかった。
途方に暮れて携帯に電話すると、なんだ足湯のところにいたのにと言われてしまった。