四万温泉は長く湯治場として栄えた歴史を持つ。
一説には征夷大将軍坂上田村麻呂の時代より知られ、昭和29年には青森県の
酸ケ湯、栃木県の
日光湯元温泉と並び国民保養温泉第一号に指定された。群馬県民なら知らないものはないという上毛かるたでも「世のちり洗う四万温泉」として名前を連ね、最近では2005年のNHK朝の連続テレビ小説「ファイト」の舞台となったことにより一気にブレイクした。
いや、一気にブレイクしすぎたのかも。
最近では少々客足が鈍っているらしい。
それでもしょっちゅうテレビの温泉番組には出ているような気がするので、もっともっと注目されて良いと思うんだが。
私の印象における四万温泉はいつも冬だ。
小雪が舞う中、狭い通りの両側に肩を寄せ合うように古めかしい宿が並び、そこをまっすぐ進んでいくとやがて新湯川と日向見川が四万川となる合流地点にたどり着く。
この合流地点の新湯川側に架かる萩橋の袂に
共同浴場河原の湯がある。
さらに萩橋の右手には
四万たむら系列の
四万グランドホテルが、左手には土産物など扱う旅の館があり、その坂をずっと上っていくと、道はそのまま入母屋造りの豪奢な四万たむら本館へと吸い込まれていく。
私たちの泊まる花涌館は四万たむらの旧館であり、四万たむらの一部でもあるが非常に質素な作りで豪華さは無い。
だからこそ我が家の予算でもぎりぎり元旦に泊まれるわけだが。
たむら本館に泊まろうがグランドホテルに泊まろうが花涌館に泊まろうが、これら系列すべてのお風呂にはわけ隔てなく入ることができる。
本館にある甍の湯、森のこだま、御夢想の湯、甌穴の湯、岩根の湯、竜宮の湯、花涌館の翠の湯、グランドホテルの岩船の湯、室生の湯、メルヘンの湯、これら全部。
そんなわけで、
高崎天神の湯、ふるさと公園たけやま、親都神社などに寄ってきた私たちが四万たむらに続く最後の坂を上ったのは11時15分のことだった。