浴室は少し薄暗く、中央に浴槽が二つ、その周りに少し小さめの浴槽がいくつか並んでいた。
どこも大混雑。特に浴槽によっては入る隙間もないくらいだった。
神棚と湯もみ板もあったが、板はお飾りっぽい。
この時点での私の「合わせ湯」に対する知識は以下の通り。
非加水の、温度を変えた源泉の浴槽が複数あり、ぬるい方から順に体を慣らしながら熱い湯に入る。
どこで読んだのか、どこかにそんなことが書いてあったように思う。
でも少なくとも
大滝乃湯の館内ではない。
だって前回いくら探しても合わせ湯の説明は私には見つけられなかったから。
だが、ぬるい方から熱い方に順番に入っていくという私の半端な知識も間違っていたようだ。
浴室の壁に合わせ湯の浴槽温度と入浴順序について簡単に記した紙が貼ってあって、それによると、
1番目 42度の浴槽
2番目 46度の浴槽
3番目 40度の浴槽
4番目 45度の浴槽
5番目 44度の浴槽の順で、番号順に約1分ずつお入り下さいと書かれている。
さらに6番目の浴槽もあるのだが、そこに書かれた温度や番号は消されている。大滝乃湯の源泉は煮川源泉メインだが、6番目の浴槽だけ万代鉱が張ってあって打たせ湯もあるようだ。
この温度と順番だと、どう見てもぬるい方から順に体を慣らしていくとは思えない。
だってそうでしょ?
最初は42度と熱くもぬるくもない普通の温度から入り、二つ目にいきなり46度と最高温度だよ。
まあ次に40度と一番ぬるいところに入るのは判る。熱い体をクールダウンというところ。だとしても、ぬるい方から順に入るというのとは相反しているけど。
さらに意味不明なのが4番目と5番目。
これらの順番にどういう意味があるんだろう。そこのところの説明がやっぱり欠けている。
ついでに言うと、約1分ずつ入れと書いてあるのに浴室内のどこにも時計がない。
脱衣所にはあるけれど、お風呂に入った状態では見えないし、もちろん普通の壁掛け時計だから1分単位できっちり測るというためのものではない。
どこまで真面目なんだか不親切なんだかさっぱり判らない謎の合わせ湯だ。
今ここにぎっしりといるお客さんたち、みんなどこまで判って入っているんだろう。判らないなら判らないで、何のためにわざわざ脱衣所も別になっている合わせ湯にやってきたんだろう。
こんな鬱陶しい疑問を持つのは私だけ?
私は根が真面目なので、説明書通りにまずは42度の浴槽に入った。
42度にしてはぬるめのような気がするが、いくらでも入っていられそうな適温。
大滝乃湯に使われている煮川源泉は一般の宿には引かれていない。ここか、隣の
共同浴場煮川の湯に行かないと入れないと言われている。
煮川の由来は皮が煮えるほど熱いからと聞いている。
一昨日、昨日今日と立て続けに入った湯畑源泉の湯が肌馴染みの良い優しい感じの湯だとすると、煮川の方は硫黄の臭いも強くパンチも強い。
二番目が46度だった。
流石に熱い。
それにお湯がぴちぴちしている。
ぐんと水圧を感じる。皮膚を境にして、自分の体とお湯が闘っているみたいだ。
しばらく入っていると弱点であるすねがちりちりと痛み出した。やっぱりここの血行が悪いみたいだ。
上がるとどっと疲れる。
ぬるい湯に入ったときとは比較にならない疲労感。どっと汗も出てきた。
しばらく体を休めて、それから休んでいるくらいなら次の40度に入るべきだったと思い直して三番目の40度に入ってみた。
ぬるい。
体が熱くなっているせいか体温より低く感じる。
この浴槽が一番人気で凄い人数が入っていた。
ぬるいので長い時間入っていられるからかもしれない。
それに驚くほどぬるぬるする。一昨日
喜美の湯に行ったときも少しぬるつくかなと思ったけど、この合わせ湯のぬるい浴槽はそれの比ではない。
アルカリ泉のにゅるにゅるとは感触が違うが、ローションinビオレぐらいのぬるつきがある。手でこすってもぬるぬるは判らないが、肘や膝が曲がってあたった部分の肌がすれるときにぬるっと滑るような感じ。
酸性泉で皮膚の表面が溶けているのかな。
角質が取れるのは嬉しいけど、いい気になって入りすぎると皮がむけちゃいそう。長湯は禁物だ。そう言えば1分ずつ入るんだった。
クールダウンしたところで次はまた熱い湯。
46度の浴槽と隣り合わせの45度の浴槽。
ここも隣と負けず劣らず熱い。
湯口からお湯がばしゃばしゃ出ている。
でもやっぱり草津は熱い湯。
これでなくっちゃあ。