5.坤六峠を越えて
そういえばまともに朝ごはんを食べていなかった。車の中で、コンビニで買った肉まんを食べただけだ。このところ、
白骨泡の湯、
埼玉の清河寺と空腹でぬる湯に入る機会が多く、辛いなぁと思うと胃の中が空っぽなのだった。
宝川温泉を出て、湯の小屋温泉の手前で赤い屋根という御食事どころを見つけた。隣で山菜などを売っていてその横でおじさんが木の器を削っている。
「こちらのお店、営業中ですか?」
「ああ、やってるよ」
おじさんが作っていたのはうどんを捏ねる鉢だった。
ここで山菜うどんとすいとんの定食を頼む。時間は11時過ぎ。何だか朝とも昼ともつかない感じ。
次は湯の小屋温泉龍洞のところで露天のキノコ屋を見つける。茶色、白、大小さまざまなキノコを笊に入れて売っている。
2,000円のいろいろ入っているのを買った。巨大なめこ、マイタケの他に、大黒シメジなどの冬キノコ。
賑やかな売り子のおばちゃんたちは、「キノコ採りに来たんじゃないの? 採ったらうちで鑑定してあげるよ。一回200円だよ」と姦しい。
キャンプ場に泊まるから鍋に入れたいと言うと、少しおまけでつけてくれた。
「今日なんてあったかいけど、午後3時を回るとがくっと冷えるから気をつけるんだよ」
あとは坤六峠を目指してひたすら登るだけ。
右手に沢があり、ところどころ瀬になって綺麗だなと、ちょっと青森の奥入瀬を思い出したら、そこが紅葉の名所、照葉峡だった。但し、湯の小屋を過ぎた辺りから、もう紅葉は終わりかけている。ところどころオレンジに染まった林を車は抜け、だんだんと辺りの景色は葉を落とし骨だけになった木ばかり立ち並ぶようになってきた。
峠はまるはげだった。
葉は一枚も無い。これだけ見事に広葉樹ばかりだとさぞや紅葉絶世期は綺麗だろう。今は…見る影も無い。
まあ、日程が後ろにずれた時点で坤六峠の紅葉はあきらめていた。入り口と出口で紅葉を見られればいいなくらいで思っていた。
来年もし来られれば、10月前半に勝負をかけよう。
道が下りに入ると、又段々と色づいた葉が戻ってくる。
見下ろすと、山の下の方にまるでオレンジ色の淡い炎のように木々が燃えて見えるよ。
今夜はバンガロー泊だからどこかで食料を仕入れなければならない。尾瀬戸倉、片品、吹割と過ぎて途中に小さなスーパーマーケットはあったが、野菜ばかりで肉類が手に入らない。沼田まで出ないと無理かと思ったら、白沢の先でベイシアを見つけた。ここで買出しを済ませ、あとはキャンプ場へ。
え? もう一箇所温泉に入っていく?
せいぜい一番キャンプ場に近い吹割温泉ぐらいかなぁと思ったけど、どこを選んでもいいの?白沢高原温泉、南郷温泉、摺淵温泉…このあたり、車で10分走れば温泉に当たるっていう感じ。白根温泉には興味があるけどちょっと遠いか。
老神でもいいよ。
ホント?
老神だったら
東秀館に行きたい。前に
群馬の温泉ページのtakayamaさんに老神だったら東秀館のお湯が最高と聞いたからだ。