「次はどこへ向かうんですか」
時間はそろそろ午後1時近い。朝ご飯はがっちり食べてきたけど少しお腹が空いてきた。
「
マリーバの方に行ってみようと思っています」
マリーバは
アサートン高原でアサートンに次いで大きな町。
アサートンからはケネディハイウェイを30キロちょっと、真っ直ぐ北上すると着く。
乾いたサバンナ気候で周辺の景色はブッシュファイアの痕の残るユーカリ林と蟻塚ばかり。
マリーバの町中にはそれほど見るところは無いが、周辺には野生ロックワラビーに餌付けできる
グラナイトゴージ、非営利団体が管理する自然保護地区
マリーバウェットランド、毎年7月に
ロデオ大会が行われるKerribee
Park、野生のカンガルーが山ほど出没するマリーバゴルフ場、
マンゴーワインのワイナリー、それにCairns Wildlife
Safari
Reserveというサファリパークもある。
ちなみにこのサファリパーク、以前つぶれてしまったワイルドライフパークをリニューアルして最近オープンしたものらしいが、私見ながらわざわざ
ケアンズまで行ってライオンやトラを見る意義があるのだろうかと思っている。オージーにとっては珍しい動物を見るいい施設なんだろうけど、日本からの観光客はせっかくだからオーストラリアだからこそ見られる動物を見に行った方がよほど有意義だよ、きっと。
「マリーバウェットランドに行くんですか?」
「違います」
私はヘイスティー湿地で水鳥が不発だったのでもう一ヶ所水辺を回るのかなと思ったが、どうやらwillieさんはもう次のことを考えていたようだ。
「アサートン高原に来ると、いつもランチに困るんですよね。なかなか良い店が無くて。特にマリーバは町中にはせいぜいファーストフードみたいなものしかなくて、地元の人はどこでお昼を食べるんだろうと不思議に思うくらいです」とwillieさん。
「でもなかなか良いところを見つけました。そこに行こうと思っています」
そしてそこで話題を変えて、
「コーヒーベルトって知っていますか?」と聞いてきた。
私は紅茶は大好きだがコーヒーは飲まない。
「知りません」
「良質のコーヒーを栽培するには適した条件があって、それに合致する場所が赤道から限られた距離にあって標高の高い土地です。
ケアンズは位置的にそのコーヒーベルトに入っているのですが標高が足りない。そこでアサートン高原ならちょうどいいんじゃないかと栽培が始まりました。最初のコーヒー農場は一軒だけで・・・私はそこをケアンズで最もとっちらかった農場と呼んでいますが、ここ数年でどんどん増えて、今やコーヒーはマリーバを代表する農産物となっています」
確か数年前まではマリーバの代表的農産物の一つは煙草だったはずだ。しかし今は煙草農家は一軒も残っていないと聞く。そのことにもwillieさんは回答を教えてくれた。
「煙草農家はコーヒーに転作しました」
すると本当にコーヒー栽培が爆発的に広まったのはここ数年のことなのだ。
私が子連れでケアンズに行き始めた4年前は、まだ日本ではケアンズ(アサートン高原)のコーヒーはほとんどまったくと言って良いほど知られていなかった。
2004年に
ケアンズショーというお祭り会場でたまたまケアンズハイランド産のコーヒーを目にして、お土産として買い求めたのだが(当時の旅行記
ケアンズ・ハイランド産のコーヒー豆参照)、そのとき掲示板でも「オーストラリア産のコーヒーなんてあるんだ」「美味しいの?」と話題になったぐらいだ。
「世界で最もコーヒー消費量の多い国がどこだか判りますか?」
「わざわざ問題にするくらいだからアメリカとかもっともらしい国は違いますよねぇ・・・」
「意外な国ですよ。スウェーデンです。スウェーデンの王子がたまたまオーストラリアに留学していましてね、オーストラリアのコーヒーがいたく気に入って、帰国後も取り寄せ続けたんです。そうしたことからもオーストラリア産のコーヒーの人気が急に上がってね。コーヒーとは関係ないのですがスウェーデンの王子はオーストラリアの女性と婚約もしました」
そりゃあずいぶんオーストラリアびいきの王子さまだったんだな。