25.浴衣に下駄でカランコロン
私が留守にしている間、パパは子供たちを
安代館のお風呂に入れて頭なども綺麗に洗ってくれたと言う。
もう、寝る前に子供たちをお風呂に入れる必要は無いのね。
そうしたら、パパは一人でゆっくり渋温泉の外湯に行ってくれば?
黒岩商店は閉店する夜9時まで鍵を借りていていいと言ってくれた。まだあと1時間以上ある。
「やだー、一緒にお風呂入る」とカナ。
「レナも行く」とレナ。
せっかく来たんだから入りなよというときは入りたがらないで、入らなくていいよというときに限って入ると言うのね。
変なの、あなたたちって。
それじゃあこうしよう。
みんなでこれから渋大湯に行こう。
実は今までの心残りがひとつあって、それはせっかく若女将さんが選ばせてくれた色浴衣を着て石畳を歩いていないことだった。
湯けぶりウォークはもちろん、
湯田中大湯、
穂波元湯へ歩いたときも距離を考えると浴衣を着て出る気になれなかった。
渋九湯巡りのときはよほど着ていこうかと思ったが、何度も脱いだり着たりするのに色浴衣は不便だった。宿の名の入った浴衣と違って、かなり丈が長くできているのでいちいち腰ひもで持ち上げなくてはならないのだ。そのくらいなら洋服の方が楽だと思い、結局着ていない。
家族でのんびり
渋大湯まで往復する。このシチュエーションならばっちりだろう。
嬉しいな。綺麗な浴衣で下駄をカランコロンいわせてレトロな温泉街を歩けるのは。
一家四人で夜道を散歩しながら渋大湯へ向かえば、途中で人なつこいわんちゃんと出会った。
飼い主は「この子はさくらっていうんだよ」と名前を教えてくれて、子供たちにもお手をさせてくれた。