滝の湯を出て再び麻釜の横に出ると、ちょうど坂を上ってきた温泉卵隊と出会った。
えんぴつさんやあやさんの説明によると、どうも卵をお湯に付けて(野沢温泉ではところどころに温泉卵を作るための槽がある)出来上がるまで入浴・・のつもりが、やっぱり卵が心配で、茹で上がるまで卵の傍で待っていたため時間が掛かったらしい。
温泉卵隊から大湯は激混みだったと最新情報を仕入れ、また滝の湯は今なら無人とこちらの情報も渡し、それぞれ別れた。
次は大湯だと考えていたのび太さんだが、温泉卵隊の情報を得て急遽目的地を河原湯に変更。
お気楽隊員の自分は地図も開かずくっついて行っている。
途中で義満さんがさっきのふるさとの湯に入っていくと離脱して、河原湯に着いたのは二人だけだった。
たぶんナイジェルさんはとっくにここをクリアしているだろうけど。
滝の湯と違って賑やかな温泉街の中にあるし、近くの大湯が激混みならこちらもさぞや混んでいるかと思えば・・・
スポッと現実から切り離されたように河原湯も誰もいなかった。
誰かが忘れていったらしい高級なシャンプーセットのボトルが湯船の脇に置いてあったり、足ふき替わりの古びたタオルや木製とプラスチックが混在した湯桶が整頓されていない状態で散らばっている様子が、ついさっきまで大勢の入浴客がいた情景を髣髴とさせ、何だか妙な気持ちになる。
河原湯は滝の湯と比べれば明るく広い。
いたんだゆでたまご臭がする。
お湯はほぼ無色透明。白い湯の花少し。
温度は適温、というか、野沢にしてはぬるめに感じる。前に入った人が加水したのだと思われる。
ここのお湯の特徴は上がった後、乾きかけた肌が他よりぺとぺとすること。サラサラって感じじゃない。
ちょうど出ようとしたときに新しいお客さんが入ってきた。
たぶん観光客じゃなくて地元の人。住んでいるんじゃなくて温泉街で働いている人なんじゃないかな。
なんでかって言うと、ずかずかと入ってくるなり、お湯の温度も見ずにいきなり大量加水。
迷うことなく浴槽の横のハンドルを全開にして、そうしたら湯口のすぐ左にあるもうひとつの湯口みたいなところから、弧を描いて勢いよく水が出てきた。
私はあんなところから水が出るなんて知らなかった。
その人は水を出しっぱなしにしたままカランに行き頭を洗い始めた。こりゃものすごくぬるくなりそうだ。