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鳴子温泉巡り旅

9.ちょっと豪華に鳴子観光ホテル






 「できれば次は綺麗で鄙びていなくて豪華で広~いお風呂に入ってみたい」と、くららさん。しかもどうもB級を苦手とするうちのパパに気を遣ってくれたのもあるらしい。
 「ちょっと高いけど、鳴子観光ホテルにしようと思っているの」
 どこでもお任せしますとは言ったものの、鳴子観光ホテル、鳴子観光ホテル・・・確かあそこは・・・
 「循環の可能性があるかも」
 「えっ!」
 くららさんは混浴は苦手だが、循環風呂はもっと苦手なはずだ。
 「えーとね、確か昔、どこかの掲示板で循環の可能性があるところだって書いていたのを読んだような記憶があるんだけど・・・」
 くららさん、ちょっと迷う。
 ちなみにこれは私の思い違いで、そこで循環らしいと書かれていたのは鳴子観光ホテルではなく鳴子ホテルのことだったのだが、どちらにせよ後から思うと結果は同じだった。
 でもくららさんは鳴子観光ホテルに行きたい気持ちも強いようだ。
 「写真で見ると白濁した濁り湯だし、二種類の源泉に入れるって書いてあったような気がするから・・・」
 私たち四人はハマーに乗ったまま、ちょうど共同浴場の滝の湯の前で考え込んでしまった。鳴子観光ホテルはもう目の前に見えている。
 「循環だったらつまらないから、この辺に見えている他の旅館のお風呂に行ってみるか?」とデビさん。
 「鳴子観光ホテルの日帰り入浴受付時間までまだあと30分ぐらいあるから、いっそ目の前の滝の湯で時間を潰してみるって言うのは?」と私。滝の湯に先に入っていれば鳴子観光ホテルが循環でも許せる気がしての微妙な発言。
 「でも滝の湯に入るのはいいんだけど、そもそもどこに車を停める?」とうちのパパ。
 そうだ、駐車場のことを忘れていた。
 「鳴子観光ホテルに、時間になったら日帰り入浴をお願いするつもりだからと言って車を停めさせてもらってから滝の湯に行くっていうのは?」
 もう思考がそれぞれ錯綜している。
 しかし滝の湯を正面からちらっと見てみたらげんなりしてしまった。
 めちゃ混みだぁ。
 入りきれなくて溢れた人が入り口にたむろしている。
 そういえば三連休だった、さっきの初音旅館が静まり返っていたからすっかり失念していたが。


鄙びのかけらも無い整然とした鳴子観光ホテル



 結局、駐車場のこともあって、すったもんだの末に鳴子観光ホテルに行くことにした。滝の湯は混み過ぎなのでやめやめ。
 このホテルは今まで入ってきた鳴子温泉郷の鄙びた旅館とは一線を画していて、湯治とか不況とかそういうワードとは無縁、大型観光バスや団体旅行客、観光地というワードを連想させ、世間がまさに三連休中だと言うことをはっきりと思い出させてくれた。

 駐車場に車を止めると早速従業員が寄ってくる。
 デビさんが「日帰り入浴したいんだけど」と言うと、流石は躾の良いホテルマン、受付時間まで30分近くあるにも関わらず、どうぞどうぞと招き入れてくれた。

 ロビーも広々としてぴかぴか。
 受付の男性は、入浴手形を二つ購入して全員で分け合った方が、現金で払うよりお得ですよと親切に教えてくれた。
 「そういえばパパは鳴子観光ホテルに泊まったことがあるんだっけ?」
 「昔、会社の組合でね」
 「どんなお風呂だったか覚えてる?」
 「もう全然」


ロビーも高級感のある鳴子観光ホテル




3-10容姿端麗な白濁温泉へ続く


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