子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★☆ 泉質★★★★☆ 湯温は適温、泉質は心配なし
- 設備★★☆☆☆ 雰囲気★★★☆☆ 宿泊すれば家族風呂などもある
子連れ家族のための温泉ポイント
小雨が降りだした中、どことなく薄暗い感じの木造旅館はまるで廃校になった学校の校舎みたいな感じだった。
ややとっつきにくい印象がある。
やっているんだかいないんだか判らない外観だ。
駐車場に車を停めてタオルを手に降りると、どこからかきりっとした感じの背筋の伸びた女性が出てきた。
着物姿だ。たぶん初音旅館の女将さんだろう。
「日帰りでお風呂に入れていただきたいのですが・・・」
女将さんは歓迎よりは拒絶を感じさせる口調で、どうしてうちを選んだのですか?といったような言葉を口にした。
ここを教えてくれた人の名を上げて、その方の紹介でぜひとも初音旅館のお風呂にと思ってわざわざ来たのだと伝えた。
女将さんは心当たりが無さそうな表情を浮かべたが、それでも闇雲にここに来たのではなく、誰かの紹介では仕方ないと言わんばかりに、どうぞと玄関口へ案内してくれた。
「但しうちのお風呂は混浴ですよ。それでも宜しいのですか?」
結局、この宿の目玉である混浴の第三浴場には先客がいたので、男性陣だけそちらに入れてもらうことにして、女性陣は宿泊者専用の第二浴場に案内してもらった。
ぎしぎし鳴りそうな古びた廊下がいかにも湯治場的な雰囲気を醸し出している。
宿泊者専用浴室を覗き込むと、鄙び度満開だったこの宿には似つかわしくなく、改装してそれほど経っていないような板の色も真新しいなかなか小綺麗なお風呂だった。
ひょうたん型の湯船で、部分的に岩を積み上げたような壁から湯口が出ている。隣に天井の繋がった別の浴室がちらりと見えていて、あちらは家族風呂かしらと思った。
少し残念だったのは、お湯の色がほぼ透明だったこと。
別源泉にしろさっきの黒い湯に近い湯に入れるのではないかと思っていたから。
まあ温泉は色だけじゃない。
ここのお風呂は臭いが強かった。今回鳴子で入った中でダントツの油臭だ。あまりに油の臭いが強くて、湯面から油分が揮発しているような気がしてくる。
ぬるつく感じはしない。どちらかというときしつくぐらい。透明に見えたが入ってみると僅かに白濁りだった。
ちょっと源泉を飲んでみると、舌で感じる味よりも鼻から入ってくる臭いの方が強すぎて、薄めたガソリンを飲んでいるような気になってしまった。
湯上がり肌はすっきりすべすべ。
初音旅館の宿泊者専用浴場のお湯は、まるみや旅館などにも引かれている赤湯共同源泉に独自源泉をミックスしたもの。
初音旅館では日帰り入浴で複数のお風呂をはしごすることを禁じているので今回は真っ黒な湯の混浴浴室に入ることはできなかった。
着物姿の女将さんは外まで見送りに出てくれた。
「うちには三つお風呂があって、全て源泉が違うのです。もちろん全部掛け流しです」
そして私たちの方を見てこう言った。
「本当は黒い方のお風呂に入れてあげたかったわ。でもそれは次の機会にね。そして三つ目のお風呂は泊まってからのお楽しみ」
なんて商売上手な女将さんなんだ。
仕方ない、次はとりあえず黒湯の大浴場を目指してまた来ることにしよう。