1.小浜温泉の共同浴場
私は小走りで緑の屋根を探してあたりをきょろきょろと見回していた。
時刻は朝の6時少し前。
まだ静かな
旅館國崎の玄関をそっと出ようとしていたら、ご主人に気付かれてしまった。
その時、共同浴場のおたっしゃん湯へ行こうと思っていると告げると、前の通りを左に行き、緑の屋根の家の上だと教えてくれたのだ。
緑の屋根。
緑の屋根。
旅館國崎は
小浜温泉とは言っても南の外れに位置し、隣に立派なハートピア雲仙小浜が建っているとはいえ、周辺は温泉街というよりも一般の住宅地のような雰囲気だ。
ひと気の無い朝の通りを風呂道具だけを手に急ぐ。
地図で見たらすぐに思えたが、それよりはちょっと遠め。
緑の屋根の建物の上と聞いてイメージしていたのは、例えば1階が公民館のような共有スペースになっていて、2階が共同浴場になっている建物だったが、見つけた緑の屋根はまったく普通の民家だった。
ホントにこれ?
と思ったら、民家の先に細い脇道の上り坂があり、そこに「脇浜温泉浴場入口」の看板が。
つまり緑の屋根の建物の上とは二階建ての建物の二階という意味ではなく、、緑の屋根の民家の裏に共同浴場の建物があり、そこが斜面になっているという意味だったのだ。