おたっしゃん共同浴場は、古びて黒ずんだ味のある木造建築だった。
昔ながらの共同浴場らしく、入り口が男女別になっている。
中も番台形式で、天井の高い広々とした脱衣所の棚は漢数字の書かれた木のロッカーで、貼られている温泉成分の分析表や浴客心得も全て旧仮名遣いの年期ものだ。
浴室では共同浴場の常らしく、既に数人の地元の方が汗を流していた。
大きな同じ作りの浴槽が二つ。
蛇口が二つあり、片方は湯で片方は水とおぼしい。
湯船の底はタイル張りだが、縁は木でできていて、それが析出物でまるで石のように硬くなっている。
熱めの湯に身を沈めると、湯気でうすぼんやりした天井が目に入る。
湯はほんのりとどこか海の臭い。
ぽかぽかとあったまるが、さっぱりとした湯上がりの肌触り。
ここは温泉街から少し離れているので、四か所の共同浴場の中でも地元の方の利用が多いのではないだろうか。
旅館國崎の御主人が仰るには、自家源泉だけど古いだけが取り柄の共同浴場でねぇということだったが、ずっとこのまま、変に観光客向けなどに変えずに残ってほしい。
そんな風に思えるお風呂だった。