10.びんぐし湯さん館
駐車場に停まる車の数に恐れをなしそうだ。
これはまた人気のあること。
確かに春休みの土曜日の夕方。家族連れなど多いとは思うが。
せっかくスキー場から離れたのに、スキー場より混雑しているかもしれない。
入り口近くは円形の建物になっていて、水着のクアゾーンがある。
浴室は奥だ。
先に休憩室の位置を確認してから、パパは男湯に、ママと子供たちは女湯に向かった。
脱衣所も人でいっぱいだった。
脱衣棚は使いにくい最下段をのぞいてほとんど埋まっているくらいだ。
何とか空いている場所を探して服を脱いだ。
当然洗い場もいっぱい。
先に入っていたカナとレナが一箇所確保していたので、二人が洗い終わってからそこを使わせてもらったが、私が洗っている間にも、年輩の人が二人来て、終わったら使わせてほしいと頼んできた。
内湯は窓が大きく、そこから坂城市街を見下ろすことができるようになっている。
ガラスの向こうは露天風呂で、入浴客はみんな揃って後ろ向き。横に並んで景色を見ているからだ。
カナとレナが内湯に見あたらなかったので、露天風呂に出てみた。
露天風呂は右手に43度の熱湯浴槽があり、中央に41.7度の横長の浴槽がある。この横長の浴槽の一部は寝湯のようになっていて、景色を見ながらくつろげるようになっている。
また、左端に二つ並んで樽風呂があり、カナとレナはそこに入っていた。
「失礼、ママも入れて」と言って一緒に入った。
とぽとぽと湯口から出ているお湯からは、ゆで卵のような臭いがする。そうそう、同じ硫黄のにおいでも、
赤倉温泉の方はもっとつんつんと刺激的な感じだった。
びんぐし湯さん館の方は柔らかく丸い臭いだ。
お湯の温度といい肌触りといい、とても気持ちの良い樽風呂だったが、「入っていると殿様になったような気分がするという意見もある樽風呂ですが、人気があるので譲り合ってお入り下さい」と張り紙があり、寝湯の方にいた子供が入りたそうだったので上がった。
寝湯の方は樽風呂より温度が高かった。
ちょうど横長の浴槽に合わせて竹垣が低くしてあるのだが、それでもお風呂に入りながら見るには高い。
立てばよく見えるんだけどそこが残念。
こういうところも
アグリビレッジ東部湯楽里館にそっくりだ。
寝湯の方は樽風呂より少し温度が高かったせいもあり、すっかり温まったカナがそろそろ出ると言い出した。
どうぞ、と子供たちを上がらせて、内湯にも入ってみることにした。
びんぐし湯さん館は、飲泉許可を取り付けていて、内湯の湯口のひとつから源泉が飲めるはずだ。
3、4人でいっぱいという感じの丸い浴槽がそれで、黒い三つの湯口が並んでいた。
これはそれぞれ水道水と源泉と加熱水道水の口で、真ん中の源泉湯口だけに僅かに析出物がこびりついている。
先に入っていた一人が手で源泉を受けて飲み、二人目が源泉でしきりに顔を洗っていた。
飲むために用意されていたコップは、何故か陶器の湯飲みがひとつと透明プラスチックの計量カップがひとつ。
味も臭い同様ゆで卵系だった。
残念なことにこの源泉浴槽は塩素臭かった。内湯の大きな浴槽もだ。露天風呂は塩素臭がしなかったのに。