ようやく建物の影が見えてきた。
右手の三角屋根の建物がおふくろ館だ。
さっきまでまつだい駅前で二軒続けて一足早い正月休業に入ってしまっているのを見て、もしかしてここも休みかなと心配になってしまった。
駐車場に車が二台ほど停まっているが、ワイパーが立ててあるのを見ても従業員の車のようだ。
車をバックで停めると、ずごっと雪の壁にぶつかった音がした。
駐車場の周りにもずっしりと重そうな雪が積もっている。
館内から従業員の女性が出てきた。
この施設は近隣のおふくろさんたちが運営の全てを取り仕切っているということなので、この人もたぶんそのお一人なのだろう。
「お泊まりの方ですか?」
「いえ、食事はできますか?」
「はい、大丈夫ですよ。蕎麦ぐらいですが」
日帰り温泉だとばかり思っていたので、宿泊もできるとは知らなかった。
「センター系・・・とはちょっと違うような」とパパ。
た、確かに。
ナステビュウみたいな施設を想像していたので全然違った。
雪がどかどかと降っている。
おふくろ館の中に入ると、最初は目が慣れなくて真っ暗に見えた。
椅子とテーブルの並んでいるロビーはがらんとしていた。外の駐車場から察したように、今は誰もお客さんがいないらしい。
「お風呂に先に入りたいのですが」
「浴室は左手です。どうぞごゆっくり」