子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★☆☆☆ 泉質★★★★★ 湯温は少し熱め、泉質は特に問題なし
- 設備★★★☆☆ 雰囲気★★★☆☆ 休憩室有り、露天風呂はないが浴室の窓からの眺めは良い
子連れ家族のための温泉ポイント
「お泊まりの方ですか?」
雪のどかどかと降る大晦日のお昼時、おふくろ館の駐車場に車をつけると、まだ若い"おふくろさん"の一人が入り口に出てきて問うた。
「いえ、食事とお風呂をお願いしたいのですが」
じょうもんの湯おふくろ館は、雪深い松之山温泉郷の中でも少し外れた黒倉地区にある。
黒倉で発見された縄文時代の十文字遺跡にちなんで、源泉はじょうもんの湯と名付けられた。
普通の温泉旅館と異なり、黒倉地区に住むおふくろさんたちが共同で施設の運営業務や接客を全て取り仕切っているという。
7室の客室があり、食事や入浴のみの利用も可能だ。
蕎麦打ち体験のできる、そば道場も併設。
おふくろ館の中に入ると、最初は目が慣れなくて真っ暗に見えた。
椅子とテーブルの並んでいるロビーはがらんとしていた。外の駐車場から察したように、今は誰もお客さんがいないらしい。
「お風呂に先に入りたいのですが」
「浴室は左手です。どうぞごゆっくり」
当然お風呂も貸切状態だった。
思っていたより狭い作りで、タイル張りの浴室に長方形の浴槽がひとつ。
窓は広いが湯気が籠もって曇ってしまっていて閉塞感がある。
お湯は相当熱かった。
ホースで水を引き込まないととても子供は入れなかった。
一応じょうもんの湯は松之山温泉郷の8つの源泉のうちひとつなのだが、いわゆる松之山らしい油臭や濃厚な塩分のようなものとは無縁だ。
肌触り以外、ほとんどこれといって特徴がない。
自然湧出しているとはいえ、13度の冷鉱泉。加熱循環して塩素投入もやむなしというところ。
ただ景色は良かった。
窓を開け放つと、冷たい風とともに粉雪が舞い込んできて、その向こうは杉林と雪原だった。
食事をするところは先ほどのロビーの所かと思ったら、奥にちゃんとした広間があった。
18畳ほどの畳敷きのスペースの真ん中に、ぽつんとテーブルと四つの座布団。
このテーブルも私たちが来たので出してくれたらしい。広間は貸切だ。
一面広く取られた窓からは、本当なら黒姫山、米山、尾神岳が臨めるのだが、残念ながら今日は雪しか見えない。
おふくろ膳、ざる蕎麦、玄米うどんを注文した。
布海苔とやまごぼうの葉をつなぎに使った蕎麦はこのおふくろ館で手打ちしている。
太めでぐにぐにとした歯ごたえがあり、つるつるとした食感。高級な蒟蒻のような不思議な味わいだ。
玄米うどんは温かいのを頼んだ。
昨今の健康食ブームを取り入れて、今年から始めた新しいメニューなのだそうだ。
こちらはうどんというより蕎麦に近い味がする。
天ぷらもさくさくで、汁物も具沢山。
食べきれず、少し持ち帰らせてもらうことにした。
デザートには餡の入った「あんぼ」。
このおふくろ館、温泉としては今ひとつだけど、食事は美味しいし切り盛りしているおふくろさんたちがとても温かい。
また機会があったら寄りたい施設の一つ。