6.元旦の温泉は千年の湯
貸民家に戻って、yuko_nekoさんとがっちゃんはどこの温泉に行こうかと話し始めた。
我が家だけだったら、ここで温泉に行きたいと言い出すのは私ぐらいなので今日は温泉無しになるところだ。
パパはもう出かけるつもりはないようだ。子供たちも部屋で人形遊びをしたりアンパンマンのビデオを見たりしたいらしい。
パパが子供たちの面倒を見てくれるというのでyuko_nekoさんたちと一緒に出かけることにした。
「どのくらいで戻ってくるの?」
「一時間ぐらいです」とyuko_nekoさん。
・・・たぶん最低2時間は戻れないだろうな・・・と思ったけど黙っている私。
私は松之山三連発でも全然問題なかったのだが、がっちゃんたちは昨日とは違う温泉に行きたいようだった。
元旦だし、もう夕方だから旅館系は難しいだろう。
無難なセンター系で、しかもお湯が良いところ。もちろんここから近いところ。
「
千手温泉はどうかな」と提案してみる。
ちょっと遠いかな。でもここより近くて上記の条件を全て満たしたところは思いつかない。
こんな風に時間がないときには、最寄りの
芝峠温泉が営業していれば良かったのだが、あいにくと浴室リニューアル工事中とかで春まで日帰り入浴は受け付けていなかった。
一応千手はセンター系ながら掛け流しだと言うし、
千手温泉千年の湯だなんて元旦に入るには縁起の良い名前だと思うのだけど。
がっちゃんはぴかぴかの新車のカーナビにぴぴっと行き先を入力した。
それでは出発。
253号線を通って十日町方面へ向かう道はトンネルの連続だ。
私はこの道は初めてだが、yuko_nekoさんたちは昨日も買い出しで通っているはずだ。
おしゃべりに熱中しているうちに目的地に着いてしまった。
千手温泉は十日町より少し手前、信濃川を渡らず川に沿って北上したあたりにある。
住所は川西町。
先日の中越地震で被災した地域だ。
到着したとき意外にも空は晴れていた。
今夜にかけて大雪だと天気予報は言っていたが、本当かしらと思うような空だった。
既に薄暗くなっていたので町の様子はよく判らなかったが、見た感じどこも被害の後などは見受けられなかった。
ただ、千年の湯の通路に子供たちの七色の塗り絵で「震災から立ち上がろう がんばろう川西」と書かれた紙が数十枚貼ってあって、あの日、とても恐ろしいことがあったことだけはひしひしと伝わってきた。