笠ヶ岳の峠を越える道はトレーラーを引いたがっちゃんのデリカには難儀だった。
対面通行が難しいような細い道で、しかも連休だから対向車も多い。
ところどころ、相当厳しい場面があった。
何だか正月の
ゆきだるま温泉に行ったシチュエーションを彷彿とさせる。
「・・・がっちゃん、大丈夫かなぁ・・・」思わず口にしてしまったところ、後部座席に乗っていたちび姫ちゃんが「心配ないよ、パパは運転上手いから」ときっぱりと言った。
おお、さすがちび姫ちゃん。
ちなみに三人の子どもたちは旅行中ひとときも離れたがらないため、移動の時は常にどちらかの車に三人揃って乗る。今日は私たちの車の後部座席に三人並んで座っていた。
山道はどこまでが山田牧場の敷地に当たるのか判らないが、道路にも急斜面にも牛がいた。ここで暮らす牛はさぞや足腰が丈夫になるだろうなと思うくらいに。
山田牧場の辺りまで木々の葉は緑一色だったのが、高度を上げるに従い、秋めいた色合いになってくる。紅葉には早いが、どことなく黄色や赤みがかっている。あと少し朝晩の気温が下がれば全山錦に変わるのだろう。
雲は流れが速く、いきなり視界を閉ざしたり、ふいに切れてきて絶景が広がったり。
峠近くではまるで空中を走っているかのような不思議な感覚に見舞われるほど。
ようやく峠に着いた。
笠岳峠の茶屋と看板を下げた店があるが閉まっている。笠ヶ岳の登山道の入り口もあり、ちょうどこの峠を境に高山村から山ノ内町になる。
峠を越えたらもしかしたら晴れているんじゃないかなんて淡い期待を私は持っていた。
でも峠を越えた先はさらに悪天候だった。
雲の中にすっぽりとはまっているようで視界は悪いし雨も少し降っている。
下りに転じた道は最初は細く辛かったが、次第に緩やかになり、
熊の湯の手前で志賀草津道路に入ってからは余裕の二車線になってホッとした。
熊の湯、ほたる温泉を過ぎて次は渋峠に向けて高度を上げる。
渋峠は高度2172m。国道としては最も標高が高い地点だそうだ。
この渋峠もすっかり濃霧に包まれている。
広い駐車場にはぎっしりと車が停まり、志賀高原横手山のぞきスカイレーターなるアウトドアエレベーターみたいなものが見えたが、こんな日に登っても何も見えないんじゃないかと思う。
それでも沢山の観光客がスカイレーターに乗っているのが見える。半袖の人あり、コートの人あり、服装もまちまちだ。
なお、パパたちとキャンプ場で過ごしたバイク乗りの先生は、昨日はここでスカイレーターに乗ってきたらしい。そのときはよく晴れていたという話だった。
渋峠の後は山田峠を越えて
万座方面へ曲がる。
何だか硫黄温泉の臭いがするなぁと思ったらまもなく万座だ。
草津と並び称されることが多い万座だが、草津と違ってここは本当に山の中。各ホテルも斜面のあちこちに点在しているような感じ。
まだ12時前だったが、お腹を減らしたパパは「かつ丼が食べたいかつ丼が食べたい」と言い続けていた。