8.雨の夜のキャンプはやめたい
またもや車に戻り走り出してパパが言うには
「富良野って一口に言うけどさぁ、来てみると広いんだよね。よく考えると南富良野町、富良野市、中富良野町、上富良野町ってつい全部いっしょくたに考えちゃってるけど沢山の市町村に跨ってるんだよね」
そうそう何となく富良野に向かって車を走らせちゃったけど、富良野の端に着いて、それからどうしよう。
「今夜の宿なんだけどさ」パパが話しかけてきた。
「どうせ天気悪いじゃない? 晴れているなら楽しいけど雨とか降っている中でキャンプしてもしょうがないし、キャンプ場のサイト料も安くないし、今通り過ぎたところにあった日帰り温泉の駐車場とかに停めさせてもらえないかな。もちろん入館料は払って」
無理じゃないかな。道の駅とか公共の駐車場ならともかく、日帰り温泉の駐車場は。でもダメもとで聞いてみるだけなら。
それにさっき見かけた日帰り温泉は見た感じあまり興味を惹かなかったけど、でも温泉に入るチャンスがあるならそれは逃したくない。せっかくはるばる北海道まで来てるんだしね。
どうしようかと迷っているうちに距離はどんどん離れていくが、でも当てがあるわけじゃない。
天気はますます悪くなってきた。
うう・・・やっぱり戻ろう。
「カナが何でUターンしたの?」と聞く。
うん、さっき通り過ぎた温泉に寄ろうと思ってね。
ところで富良野と言えば思い出すのが
十勝岳温泉凌雲閣。
過去2回、入りたいと思って叶わずにいる。
富良野まで来たら今回こそ、本当に今回こそ入りたいんだけど。
そう言うとパパはえーっと予想した通り不満そうな声を上げた。
「遠いよ」
確かに十勝岳は富良野のすぐ隣で富良野まで来たらあと少しとも言えるが、一方では温泉に入るためだけの移動をまったくするつもりのない今回の道程からすると突出して遠い。一昨年のレンタルキャンピングカーの旅もそうだったけど、パパは移動途中にあれば寄ってもいいけど温泉のために半日とか費やして出かけていくつもりは無いという寂しいスタンス。
「どうしても行きたいの?」
たぶん諦めさせるつもりで言ったセリフだと思うんだけど、私の返事は「うんっっ」だった。
三度目の正直だよ。
「どうしてもこれだけはしたいって言う意見、今回の旅で言ってなかったじゃない。私は十勝岳温泉凌雲閣にどうしても行きたい。ダメ?」
これだけだったらパパは肯かなかったかもしれないが、カナが助け船を出した。
彼女の北海道で行きたい場所に十勝岳温泉近くの青い池も入っていたから。
元来た道を戻ってさっき見つけた温泉の駐車場に車を入れた。
道路から見える看板には「
天然温泉 万華の湯」と大きく書かれていて、日帰り専用の温泉なのかと思ったがよく見るとその下に少し小さく「ホテルリゾートふらのラテール」の文字があり、実はリゾートホテルの大浴場が日帰り温泉を兼ねているようだ。
中学生のレナは大量の宿題を北海道旅行にも持ち込まざるを得ず、今回みんなでこの温泉に入ろうと誘っても、宿題をやらなきゃならないし今はお風呂に入る気分じゃないと断ってきた。
何度か誘ったが頑なな態度だったので無理強いもできず車に置いていくことにした。ここでかなり長い時間を過ごすなら、また後でもう一度迎えに来ればいい。