4.続・法師温泉 長寿館
法師の湯の脱衣所は男女別。中で一緒になる。
カナはパパと男性用に、レナはママと女性用に行くことにした。
脱衣所と浴室を隔てるドアは、上部がガラスで浴室内が見える。女性も入っているようでちょっとホッとする。
自分で脱ぐと悪戦苦闘しているレナに付き合っていたら、カナとパパはとっくに入って待っていた。
最初の印象は、写真で見ていたより小さな浴室なんだなということ。とにかく入浴客が多い。四角い浴槽は、頭を乗せられるように丸太で均一に仕切られているのだが、それぞれの四角に、2、3人ずつは入っているような感じだ。
湯気がゆらゆらと天井高く立ち上っていく。
掛け湯をして入れば、熱すぎず温すぎず刺激も無くやわやわとお湯がまといつく。
足元に大人の掌大の丸石がごろごろと敷いてあり、その隙間からぷくぷく、ぽこぽこと小さく丸い気泡が立ち上ってくる。まさに自分の足の下からお湯が湧いているのだ。
この感動…。
二岐温泉大丸あすなろ荘や
乳頭温泉郷鶴の湯温泉以来。
これが本当に大地から生まれたばかりの、ごく新鮮で稀にしか出会えないお湯。
元々お湯が湧いていたその場所に浴槽を作り、また入浴に適した温度で沸いてこないと、入るのは厳しい。
今日は雪見露天風呂ではないけれど、上部にアーチを描く西洋風のデザインで作られた黒い木の窓枠の向こうに、白い氷柱と雪景色。
この風情は冬ならでは。
カナとレナは底の石が気になって仕方ない。
拾い上げては縁にせっせと並べていた。
特にのぼせやすいお湯でもないのにしばらく入っていたら自分は額からだらだらと汗が出てきた。
どうしてだろう。
元々私はほとんど汗をかかない。妊娠、出産すると体質が変わるとよく言うけれど、カナを妊娠してから少しかくようになった。それでも普通の人に比べたら少ない方だ。だいたい汗が流れて目に入るなんてことは経験したことすらない。睫毛は目を守るのに必要な場所に生えていると思うけれど、どうして眉毛が目から少し離れて線上に生えているのか、汗っかきパパと知り合って初めて理由が判ったくらいだ。
それがこの法師温泉に入っていると、どういうわけかだらだらと流れるように汗が出てきた。
初めてのことにかなり吃驚した。
上がったら、カナは「ねぇ、またこのお風呂に来る?」と聞いた。
パパにカナが
法師温泉を気に入ったみたいだよ、と言うと、
「石が気に入っただけだ、石が。子供の言うことを真に受けないように」と言われてしまった。
つまんないの。