4.涙の草津ふたたび
車に戻って走り出したが、町中は混んでいる。結局再び草津熱帯圏の前まで戻ってきた。熱帯圏の隣に蕎麦屋があったので、ここに入ることにした。
店の名前はあぶらや。
カツ丼と蕎麦のセットと、とろろ蕎麦を頼んだ。すごいボリューム。蕎麦湯も出てきたよ。なかなか美味しかった。カツ丼はほとんど子供たちのお腹に消えてしまった。
さあお腹がいっぱいになったから、今度こそ温泉だ!!…と私は思っていた。
だけどそう思っていたのは実は私だけだったということに、後で思い知らされた。
「このあと、何か考えている?」
エンジンの音にかき消されて、私の問いはパパに聞こえていなかったらしい。何度目かにやっと車を停めて後部座席で子供たちのお守をしていた私を振り返ってくれたが、そのとき既に車は草津を抜けていた。
「何も考えてないけど…」
「…草津でどこか入って帰らないの?」
「そんなこと、一度も言ってなかったじゃない」
…だって草津に行ったら草津温泉でしょー(涙)、言わなくったって草津温泉でしょー。ねえねえ、これを読んでいるあなた?そう思わない?これって私だけの思い込み?
今回こそは草津で無料の共同浴場のどこかに入ろうと思っていた。駐車場や浴場が連休で混雑していて、それが難しそうだったら、草津熱帯園のおふろやさんなら空いていて入りやすいだろうと思っていた。いろいろ考えていたのに、ぴしぴしとひびが入りがらがらと音を立てて全部崩れてしまった。
…
…
…
仕方がない。保険を使おう。
「浅間隠に入って帰ろう」
「浅間隠ってどこ?」
今朝、帰りはこっちの道を使おうと言っていたあの先にある温泉郷。三軒の一軒宿があって、以前、
鳩ノ湯温泉三鳩楼には行ったことがあるけど、まだ他に薬師温泉と
温川温泉の二つがあると説明した。
「いいよ」