7.東秀館でのんびり…嵐の前の静けさ
東秀館のお風呂は内湯、露天風呂それぞれ男女別にあるようだが、男湯は混浴にしても良いという。カナはまた、家族全員でなら入るというので男湯に向かうことにした。幸いお風呂に先客がいないようだったので。
露天風呂は男湯内湯からも、直接廊下からも行かれるようになっている。露天風呂の一角に脱衣棚もあるが丸見えなので、とりあえず男性用らしい脱衣所で脱いでから行くことにした。この脱衣所の棚、変わっている。脱いだ服を置くのは壁に開けられた丸い穴で、この古びた旅館の中で妙に宇宙的だ。
内湯は薄暗い中に、三つの岩風呂がある。何だかちょっと鳴子辺りにありそうな作りだ。
露天風呂はぱっと見、狭い。対岸の紅葉が、手に取るようにとはいかないが、鮮やかに見える。
お湯はほとんど透明なのだが霞がかったようにごく僅かに白濁している。少し熱いかなと思うが入ってしまうとあまり熱さは感じない。肌触りは柔らかく、とりたててきしきしとかにゅるにゅるとかいうものはない。今朝の
宝川温泉と同様、僅かに肌に泡がつく。
湯口には石のカエルが並んでいてちょっと可愛い。ここは飲泉もできる。まったりした感じのゆで卵系の味で、かなりつんとした硫黄の臭いがする。
このお湯の温まり度はずば抜けている。ちょっと入ってはのぼせて、またちょっと入ってはのぼせて…長く入っていられないのだ。紅葉でも見ながら出たり入ったりを繰り返す。内湯の屋根の手前には、色づいた柿がたわわに実っていた。やっぱり秋の露天風呂はいいねぇ。
今度こそ真っ直ぐキャンプ地へ向かうことにした。吹割の滝の見学も、明日の朝にしよう。
この時点では、まさかあのような結末が待っていようとは思いもしなかったのだ。