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** ケアンズと森とビーチの休日 **

31.マランダ・ロッジ・モーテル




 




 「地球上には昔大陸がひとつしかなく、それがプレートに別れて移動して今の形を形成したとされています」
 プレートテクトニクスの話を聞くと、小学生の頃だったか、父親に地球儀を買ってもらったときの衝撃を思い出す。
 平面に歪んだ世界地図と違って立体の地球儀を回せば、誰に教えられなくても子供にだって南北アメリカ大陸とヨーロッパアフリカ大陸の海岸線がパズルのピースのようにぴたりと合わさるのが判る。それを見つけたときのわくわくする感じが今でも鮮明に思い出せる。
 「他の大陸はそれぞれ大きく移動していきましたが、オーストラリア大陸だけはほとんど移動しませんでした。他の大陸と接触することもありませんでした。それがこの辺りに恐竜時代と同じ森が残っていて、カモノハシや有袋類という、今の哺乳類の前の世代の生物が生き残っている理由です」
 なるほど。大陸が移動すれば気候が変動する。気候が変動すれば生物は新しい気候に順応するために進化していく。進化せざるを得ない。
 「また、ヨーロッパ人が入植する前は人間はアボリジニしかいませんでした。アボリジニの人たちと言うのは、100年少し前まで非常に原始的な生活をしていた人たちです。その頃までは環境破壊とも無縁でした」
 それがまた、オーストラリアに貴重な自然と多種多様な生物が残ってきた理由のひとつだと言う。
 「カモノハシは卵を産む珍しい哺乳類と言われていますが、卵を産むというのは原始的だということです。例えばカモノハシにはくちばしがあります。これは鳥類の特徴です。カモノハシは後ろ足に毒を持っています。毒があるというのも哺乳類の特徴ではありません。昆虫や両生類の特徴です」
 くちばしは判るけど、毒を持っているなんて知らなかった。
 「カモノハシは今の哺乳類の前の世代である有袋類のさらに前の世代の生き残りです。恐竜時代から現代に至るまでほとんど姿を変えずに生きてきました。オーストラリアのコインやいろいろな企業のマークなどにカモノハシは使われていますが、実際に見たことがある人は多くありません。というのは、動物園などではほとんど飼われていないからです。そんな貴重なカモノハシがこのケアンズ近郊のアサートン高原では普通に観察することができます。ですからケアンズに来た人にはぜひともこのカモノハシを見ていってほしい」
 今までカモノハシは卵を産む珍しい哺乳類だということしか知らなかった。willieさんの説明を聞くと、益々見たくなってくる。
 「カモノハシはこの辺りでは川に普通に生息しています。ただ、臆病な生き物で見つけるのは難しいです。昼間は巣穴にいることが多く、暗くなってから水辺で餌を探します。ちなみにカモノハシは決して泳ぎの上手い動物ではないです」
 私たちはカモノハシを見たことがあるかと言えば、実はある。
 実は四年前、ドキドキ夜行性動物探検ツアーに参加してバロン川で目撃した。
 ぷくぷくと泡が浮いてきて水面が揺れるのを何度か確認した後、一瞬浮いてきたところを見て、その後、岸辺近くに泳いできたときに全身を見た。
 でもツアーが使ったポイントは崖のようになっているところで水面まで距離があって、カモノハシはかなり遠かった。もちろん撮影にも失敗した。
 今度はもっと近くで見られたらなぁと思っている。
 それにゆっくり何度も見られたらなぁとも思っている。
 当時は子どもたちも小さくて何も覚えていないようだから、記憶に残る今だからこそ一緒に見たいとも思っている。

途中で見かけた八百屋、ビッグピーナッツ。
四年前にドキドキ夜行性動物探検ツアーで立ち寄った。
何でも今回の旅行の後、一ヶ月ほどで閉店してしまったそうな(willieさん情報)。倒産か?



 「意外なところですよ」とwillieさんが言った。
 人里離れた山の中ではなくむしろ町中に連れてきたことを言っているらしい。
 でも私はどんなところでカモノハシを探すのかまるっきり検討もつかなかったので、どこに連れて行かれてもへえーと驚いたと思う。
 「ここです」
 何だか小綺麗なホテルかレストランのようなところで降ろされた。
 willieさんはずんずん中に入っていく。
 カモノハシスポットは店の中なのかと流石に驚いた。
 willieさんはレストランの中を通過して、庭のような場所に出た。
 ただっ広い庭園だ。傾斜していなかったらゴルフ場かと思うような場所だ。
 振り返るとたった今自分たちが出てきた建物の屋根にマランダ・ロッジ・モーテルと大きく書かれていた。
 ここはマランダだったのか。
 車中では話に夢中になっていたし、子どもたちが少しぐずるので後部座席に移動していたこともあって、どこを走っているのかすら把握していなかった。
 最初にバードウォッチングをした森のすぐ近くまで戻ってきていたわけだ。



知らないうちに私たちはマランダまで戻ってきていた。そしてカモノハシはこちらですと誘われて、ホテルのような入り口を入り、レストランの中を通過して、広い芝生の庭に出た。
振り返ると建物の屋根には、マランダロッジモーテルと大きく書かれていた。





3-32カモノハシ探しへ続く


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