3.トロピカル・キュランダとサバンナ・マリーバ
海沿いから
テーブルランドへ登るとき、どうしてもどこかで急坂を登らなくてはならない。
特に
スミスフィールドからキュランダへ登る道は、以前
ドキドキ動物探検ツアーで通ったときに、ガイドが気持ちが悪くなった人がいたらすぐに知らせて下さいとしきりと言って回った山道だ。
車酔いするレナが心配だったが、後部座席を振り返るともう寝ていた。
まあ夜中によく眠れなかっただろうから(おかげさまで親もよく眠れなかった)、仕方ない。
雨がまた降り始めた。
不安定な空模様だ。
たぶん海の方はこれから晴れてくるのだろう。
もしかしたらこの先しばらく山は陰鬱な天気になるかもしれない。
当初立てた予定では、キュランダに到着したら朝8時半からオープンしているはずの眺めの良いキュランダ・レインフォレスト・ビュー・レストランでのんびり朝食。それから
掲示板でみらさんに教えていただいたThe Aviary - Kuranda Zoological
Gardensに行ってオウムを肩にとまらせて野鳥園を回る・・・はずだった。
しかし空は重苦しい灰色で、ときおり激しい雨粒がフロントガラスを叩く。いつの間にか小学生のカナも寝付いてしまって、とてもではないが外で朝食を取ったり楽しく野鳥園を回ったりする雰囲気ではなくなっていた。
第一、空港ですんなりとレンタカーを借りて出発できたので、時間も早すぎる。朝の7時過ぎだ。
私たちはぬれそぼった早朝のキュランダを素通りした。
ケアンズ周辺で最も有名な観光地の一つキュランダは、何度も来ている割にまだ観光らしい観光をしたのは二度きりだ。
さてキュランダからさらに国道1号線ケネディハイウェイを南西に向かうと、37キロで次の町、
マリーバに着く。
マリーバは去年二日掛けて訪れた。
熱気球で早朝の空を飛んだり、
ロデオ大会を訪ねたり。
辺りの景色が変わってきた。
木々が低くなり、ドライな感じになってくる。
マリーバはサバンナ気候。360日のうち、300日間サンシャインが降り注ぐ。
驚いたことに雲が切れてきた。
ほんの30キロ程度でまるで鬱蒼としたトロピカルなキュランダとは天候も違う。
雲の切れ間から眩しい青空がのぞき、朝の直射日光がオレンジ色の大地を照らした。
ふと車窓に目をやると、見覚えのある建物が飛び込んできた。
確かあそこは熱気球で飛ぶ前に通った場所だ。
と思ったらパパが、「後ろの車は気球を積んでいるぞ」と教えてくれた。
えっ、どこどこ?
目を覚ました子供たちも窓に張り付く。
パパは路肩に車を停めて、後ろの車を先に行かせた。
「ほら」
本当だ。
後ろの車が追い抜いていく瞬間、畳んだ気球と人を乗せるバスケットが積まれているのが見えた。荷台を引いている車の横腹にはHot
Airのロゴ。まさにあれは去年私たちが乗った気球だよ。
気球を積んだ車はラウンドアバウトで別の方向に折れていき、やがて見えなくなった。