4.高原の町、アサートン
窓の外の空模様はめまぐるしく変化する。
マリーバでほんの少し顔を出してくれた気まぐれな太陽は、あっと言う間に厚い雲の後ろに姿を隠し、
アサートンへ急ぐ私たちの行く手は、今またどんよりと灰色だった。
ぱらぱらと降ってきたかと思うと沈黙する。
かと思うとまた霧のような雨の中を走っていたりする。
雨がやむ度にもう降らないかもという希望がもたげてくるのだが、何度もそれが打ちのめされた。
銀行とスーパーマーケットに寄ろうと思っていたテーブルランド最大の町アサートンに着いたとき、車の外はわずかな希望も押しつぶされるような、最悪の天候だった。
たとえ激しくてもスコールのような一時的な雨は何となくそれと判る。
今アサートンに降っているのは、もう何日も降り続いたような寒々しく鬱陶しいものだった。
空の色はまったく濃淡のない灰色一色で、雨がやむかもしれないという気すら起きなかった。
何だか旅はまだ始まったばかりだというのに憂鬱。
町に入りまずは銀行を探したが、ここの銀行は9時半にならないと開かないようだった。
角を曲がるとショッピングセンターがあった。スーパーマーケットのウールワースや衣料品のターゲットなどが入っている。こちらはオープンしていた。
日本だったらスーパーマーケットより銀行の方が先に開くけどなぁ。
子供たちがまだ半分うとうとしていたので、パパが一人で買い出しに出かけた。ミッションビーチに移ってからの食料は後日買い出すとして、今夜と明日の朝の自炊分と滞在中の調味料など。
いつも日本からはオーストラリアドル建てのトラベラーズチェックを持ってきて、現地の銀行で現金に両替してもらうのだが、今回はまだ両替を済ませていないので、去年の旅行時に残った豪ドル現金で買い物をした。
最近は毎年渡豪しているので、現金が残ってもまた来年使えばいいやとそのまま保管しているのが役に立った。
買い出しを終えて朝食はマクドナルドで。
アサートンのマクドナルドには二年前もお世話になった。
屋根のついた屋外遊具があり、子供たちを遊ばせることもできる。
残念ながら朝なのでハッピーセットは無かった。
おもちゃ付きのセットはオーストラリアでも有り、一昨年はカナもレナもパペットをもらったのだが。
レナはまだ寝ていたが、起こして連れていくことにした。
車を降りると雨の高原は長袖を着ていても寒いくらいだった。
いわゆる朝マックを食べて、子供たちは遊具で遊んで、パパはようやく開いた銀行で両替を済ませてきた。いつもは豪建てトラベラーズチェックは手数料無しで現金に換えてもらえるのだが、アサートンの銀行では5ドルの手数料を取られた。銀行によるのかもしれない。
キュランダやアサートンであれをしようこれをしようと考えていたプランは、時間が合わないのと天気が思わしくないのでことごとくつぶれてしまったが、雨でも楽しめること、子供たちが喜びそうなことということで、まずはアサートンのクリスタル・ケーブスに行ってみることにした。