20.温泉三昧
部屋に戻って一休み。
チェックインが早かったので、まだまだ暗くなるまで時間がある。
パパがまた、旅館の風呂に行ってくるかなぁと言ったので、どうせなら
共同浴場に行って来れば、と送り出した。
しばらくして戻ってきて、
「ああ、いい湯だった」
「でしょでしょ。誰か他に入ってた?」
「二人ぐらい地元の先客がいたけど、あがっちゃってあとは貸切だった」
さらに面白いものを見つけたという。
「窓から川が見えるだろう? あの川、うようよ岩魚が泳いでいるのが見えた」
なんと風呂から岩魚の群が見えたんだって。
「カナ、レナ、ママと一緒にお風呂に入ってくれば」
何も無理して入れなくても。
朝一番で
川治温泉に入ってるんだし、後は寝る前にシャワーのある大浴場で洗えばいいんじゃないの?
「やーだ、入らない」とカナ。
「部屋で遊んでる方がいーい」とレナ。
ほらね。
「でもせっかくだから明るいうちに一緒に入ろうよ。外の景色が見える方が楽しいよ。家族みんなで入れるお風呂もあるんだ。四人で入るならいい?」
「それならいいよ」とカナ。
「レナもいいよ」
何だか風呂に入りっぱなしのような気がするが、またまた入ることになった。
そういえばまだ、
湯西川別館のお風呂には入っていなかった。
ところが残念ながら貸切家族風呂は先客が使用中だった。
ここは空いていれば札をひっくり返して使うシステムだから、早いものがちだ。
混浴露天風呂にも先客がいるようだ。
仕方がないので子供たちを連れて女湯露天風呂に移動した。
もちろんパパは入れないから、一人で混浴露天風呂の方に行ったようだ。
今日はパパも珍しくお風呂に入りっぱなしのようだ。
女湯露天風呂と混浴露天風呂は隣り合わせだ。
竹垣で仕切られていて、何故か混浴の竹垣には窓のようなものがあり、そこから顔を出すと女湯が見える(覗いちゃいけないよ)。
混浴と反対側も竹垣があって、どうもその向こうは隣の湯西川本館の露天風呂のようだった。
ここのお湯も無色透明。
湯西川公衆浴場や
西川温泉のようにゆで卵の臭いがするが、ここのが一番傷んだゆで卵のようだ。
軽いきしきし感のある肌触り。
浴槽の一角にコップの備え付けられた湯口があり、そのあたりから時々熱い湯が流れてくる。
かなりお風呂が広いので、ゆったりと入れる。
周りには草花が植えられていて、気持ちが和む。
私は温泉としてはともかく、お風呂としては都市部のセンター系日帰り温泉はどうにも好きになれない。
こういう山や野の花が見えるようなお風呂が好きだ。
そしてもっと好きなのは、今日入った西川温泉や湯西川公衆浴場のような、その土地の素顔が見える温泉だ。
やっぱり栃木路はいいなぁ。
栃木は関東と南東北の境目のように思う。
ちょうど湯船の縁に溝のある平たい岩があって、子供たちはそこにお湯をかけて遊んでいる。
小さなハムスターの人形を持ってきたので、岩の上に並べている。
それがとても楽しかったらしく、カナはあがるとき、またこのお風呂に入りたいなと言った。