子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★★★ 泉質★★★★★ お湯はぬるめで寒い時期は辛いくらい、泉質は特に問題無し
- 設備★☆☆☆☆ 雰囲気★★★☆☆ 有料だが休憩室が有り、持ち込みも可能
子連れ家族のための温泉ポイント
享保8年、男鹿川の五十里湖が決壊し近隣の村は水没するという事件があった。
洪水の後に川沿いにお湯が湧いていた。これが川治温泉と呼ばれることになった。
日光の手前にある今市市から、鬼怒川温泉を過ぎてさらに北上すると、次に賑わうのは景勝地龍王峡、そして川治温泉に至る。
このあたり、鬼怒川と会津西街道こと国道121号線、そして東武鬼怒川線が束のようになって南北を貫いている。
首都圏から鉄道でもアクセスできるというのが鬼怒川流域温泉街の強みなのだ。
車で共同浴場の薬師の湯に行くには、温泉街を抜けて長生閣名月苑の奥を左折すれば良い。
ちょうどこの辺りは、鬼怒川と鬼怒川の支流男鹿川が合流するところで、川に向けて道を下りながら私たちは以前の記憶を辿っていた。
川治温泉薬師の湯は以前にも一度訪れたことがある。
寒い冬の日で、奥鬼怒温泉郷の加仁湯からの帰りだった。
川治で温まって帰ろうと思ったのだが、入ったお湯は体温とさほど変わらず、時間が経っても温まるどころか益々冷えてくる様子。
あまりの寒さに源泉の噴き出し口から離れられず、上がって服を着るのにはかなりの勇気が必要だった。
だから川治といえばぬるい湯という印象がある。
以前は中を仕切って男女別にしてあった半露天風呂は、今は仕切を取り払って女性専用にしてあった。
また、去年までは朝早くからオープンさせていたようだが、この春から10時オープンに変更になったようだった。
10時になるかならぬかのうちから、地元の人がどっと入ってくる。
混浴の露天風呂は、脱衣所の隣の一部囲われた浴槽と、本当に川沿いに張り出したものと二つある。
地元の方はほとんど脱衣所の隣のお風呂に入っているようだった。
お風呂だけでなく脱衣所も、混浴の方は男女共用だ。
しかも隣の浴槽とはガラスで仕切られているだけなので、本当にここで女性が脱衣するのは勇気がいる。
杖をつきながらやってきたおばあちゃんは、「ここのお風呂は家のお風呂よりずっと温まっていいんだけど、ここに来るまでの階段がねぇ」と溜息をつきながら教えてくれた。
川沿いの露天風呂は誰も入っていなかったので、我が家はそちらに入らせてもらった。
おお、ぬるい。
このぬるさが川治らしい。
今の季節ならちょうど良い。
1時間でも入っていられそうな温度だし、それに出るときはちょっとひやりとするぐらいで寒いことは無い。
お湯は無色透明、臭いも温かいお湯らしい臭いしかせず特に温泉らしさは無いが、泡付きがとても良い。
源泉は上からではなく中から注入されているのだが、ぽこぽこと泡と一緒に出ていて、その泡が体中につく。はらってもはらってもというくらい。なかなか気持ちよい。
川はよく見えるが、川からもよく見える。
朝一番でも何人か先客がいらしたが、その後も次から次へとお客さんが来る。地元の人あり、ハイカーあり。大盛況だ。
お湯の中ではきしきしとした肌触りは、湯上がりにはさらさらとしていた。
ときは6月。
空は晴れ、緑眩しいが紫陽花が咲くにはまだ少し早い。
川治温泉薬師の湯からも見える黄金橋を渡れば、そこは竜王峡まで遊歩道の続くあじさい公園だ。
まもなく花の時期を迎える公園の草刈りをしていたおじさんは、こんな風に教えてくれた。
「これからの季節、大勢のお客さんが龍王峡からあじさい公園まで歩いて、その後薬師の湯で汗を流し、川治の駅から電車に乗って帰って行くんだよ。でも薬師の湯は朝の一番風呂が最高だよ」