18.橋のたもとの公衆浴場
茅葺き屋根の平家集落がよく見える大きな橋のたもとのY字路まで来た。
土産物屋柏屋の隣の道を入る。
細い道の先は太鼓橋状にカーブした小さな橋に続いていた。
この小さな橋のたもとに、くたびれかけた木造の湯小屋が建っていた。
共同浴場入浴の心得と書かれた金属の板も周りがすっかり錆びている。
入り口前をひょいひょいと野良猫が横切った。
このあたりに住み着いているものか、それともどこぞの家で飼われているのか。
猫がうろうろしているだけで何となく鄙び度が増すような気がする。
誰もいませんように・・・いや、いないからって入ると、さっきの
川治温泉薬師の湯のように出るに出られなくなってしまうかもしれない。
今回はサポートしてくれるパパもいないんだし。
どうしようかな・・・。
入り口の引き戸を開けると、右手に脱衣所、左手に浴室。
どちらも完全男女共用で、女性には入りにくい。
先客は一名、気むずかしそうな年輩の地元女性だった。
「入らせてもらって宜しいですか?」
「男の人が来る前に早く入れ入れ」
そ、それじゃあ遠慮なく。
石をそのままくりぬいたような雰囲気のある浴槽で、パイプから熱湯がそそがれている。
源泉の隣のパイプは冷水で、こちらは出口の処に三ヶ所ほど穴を開けた桶をくくりつけてお手製のじょうろのようになっている。
お湯は無色透明で柔らかいゆで卵の臭い。細かい湯の花が表面に浮いている。
温度は熱めだが、かなり加水もされているので入れないほどではない。
軽いきしきし感がある。