予約した宿は山口屋別館。
本館があっての別館なのか、それとも本館は無いのか判らなかったが、宿には温泉が無く外の共同浴場に通う外湯スタイルが今も残っている温泉街 俵山温泉に於いては、内湯(旅館が温泉浴槽を備えているという意味)有りの山口屋別館は異色で、それもあってかメインストリートからは外れた立地にある。
先ほどの土産屋こと福田泉月堂の左手をのぞくと道の先には石段の上に建つ熊野神社の社が見えるが、神社の手前を左に入る細い坂道を上るとその途中に山口屋別館がある。
ちょうど車も入れるようになっている入り口のところがゲートになっていて、そのゲートの部分の上部がまるまる部屋になっている。チェックインしてわかったが、ここが私たちの泊まる部屋だった。
母屋の方は普通の旅館というか、まあ民宿に毛の生えたような感じで、帳場の前は統一感の無いソファーや民芸品が置かれ、貼られた観光ポスターやマガジンラックからはみ出した雑誌がどことなく雑然とした印象を与える。
ただ、剣山に活けられた花や鉢植えの花は本物だ。
山口屋別館は本館の普通の客室の他に、離れが2室ある。
ひとつは五合庵という名で、離れと言うか完全に独立した一棟の民家。それも江戸期の旧家の数寄屋造り古民家を利用し、民具、錦絵など100点以上のコレクションを展示しているという貴重な部屋で、古いもの好きの私は本当はここに泊りたかったのだが、残念ながら大人二人で申し込めるプランは無かった。
もうひとつは単純に二階の離れという表現をされていたが、これがその、入り口のゲートの二階部分のことだった。
最初はびっくりしたが、中は広く二間続きで、ガラスケースに入った日本人形が何体か飾ってあったり、鴨居の上に日本画が飾ってあったり・・・早い話がやっぱり旅館と言うよりも田舎の旧家に泊りに来たような部屋だった。
高級感というのとも違って、凄いんだか凄くないんだかわからない。
でも居心地はなかなかいいと思う。
それにここも独立しているので、私たちは今回大人だけだけど、子供連れなんかにもありがたいと思う。多少どたばたしても壁の隣や床の下に別の客室は無いから。
ついでにこの宿の離れはペット可だ。
仲居さんたちもフレンドリーで、共同浴場の場所など聞くと、すぐに地図を持ってきて説明してくれる。
俵山温泉には共同浴場は二つ。
温泉街の中ほどにある町の湯と、露天風呂なども備えた充実設備の白猿の湯。
昔は川の湯という共同浴場もあったが、これが廃止されて代わりにできたのがその白猿の湯だということだ。