正面湯を上がったら再び船見商店にお願いして鍵を開けてもらう。今回案内してくれたのはさっきのおばちゃんとは違う人。
正面湯より距離があったので少しおしゃべりした。
今夜はあつみ温泉に泊るって言ったら、あつみは湯田川よりお湯が熱くてぴりぴりするかもしれない。こっちのお湯はぬるめで優しいよって言われた。あと、正面湯と田の湯と二つも入ったら湯あたりしちゃうよとも言われた。焦っ。
田の湯は角を曲がって奥の旅館の建物の一部ででもあるかのように小ぢんまりとしていた。
ここも軒下に注連縄が掛けられている。神様の賜るお湯だ。
靴箱は空っぽ。やったね。さっきの正面湯では地元の人の賑わいを、こちらの田の湯では独占した静かなお湯を体験できる。
長方形の浴槽は3、4人サイズかな。脱衣所も狭く、カランは一セットしか無い。
浴槽の縁は黒い石だけど、あとは床も浴槽の中も全部シンプルなタイル貼り。湯口は凝っていて白いライオンの顔だけど、析出物で下あごだけはベージュに色づいている。
お湯は正面湯と同じだけどよりぬるめだった。そういえば船見商店の人も田の湯の方がぬるいと言っていた。
こっちは湯の花も無く本当にすっきり無色透明で綺麗なお湯。
しみじみ系だね。わけもなくだらりと力を抜いてしまう。
ベビーベッドは無いけど代わりに使えそうな台はあった。
そろそろあがろうと思ったときに洗面器を手に二人ほど入ってきた。
外に出るといったん止んだ雨がまた降り始めていた。