夏休み東北日記 五日目


7月29日(月)

 今日は田沢湖を離れる日。東北に来てから、ずっと晴れている気がする。思えば去年の南紀旅行もそうだったっけ。事前の予報ではずっと雨や曇りのはずが、旅行が始まったら、ほとんど晴れていた。

 もうお家に帰りたいな、なんて言っていたカナも、実は田沢湖が気に入っていたらしい。いざ帰るとなると、また絶対来るからねなんて言っていた。

 さて、今日の行き先は、青森県の相馬村。弘前市のすぐ側で、白神山地にもほど近い。
 ルートは、地図上で見ると、341号線を北上するのが近そうだが、ドライバーは昨日と同じ道を通るのはつまらないと言う。すると、秋田縦断道路、105号線を北上することになる。
 十和田・八幡平へ向かう341号線と違って、105号線沿いは観光地じゃないため、まったくガイドブックに出てこない。道はあまりアップダウンもなく、走りやすい。秋田内陸縦貫鉄道が並行して走っているので、途切れることなく田舎の民家が続く。
 ただ走っているのもつまらないので、地図で阿仁町に阿仁異人館・伝承館というのを見つけて立ち寄ってみた。


 浅学でまったく知らなかったが、阿仁町というのは、鉱山で大変栄えた町らしい。享保元年(1716年)には産銅日本一だったそうだ。金や銀も採れたらしい。
 子供達に全然面白くない施設だったらどうしようと思ったが、石が好きな子供達は、きらきら光る鉱石や水晶に興味津々。

 
 左は鉱山の鳥瞰図。右は使用していたカンテラ。
 異人館というのは、鉱山に招いたドイツ人技師の官舎として建てられた明治時代の建築物で、国の重要文化財に指定されている。

 さて、その後は真っ直ぐ鷹巣町の中心部まで北上するかと思いきや、大館能代空港近辺で右折、285号線へ入る。
 そのわけは、今夜はパパ特製・比内鶏のきりたんぽ鍋にするぞと、パパが宣言したためである。比内鶏と言うからには、比内町を通らねば。

 
 流石、鶏の町。通りの名前はコケコッコ通り、電話ボックスは卵形だ。
 道の駅とっと館で材料を仕入れて、先を急ごう。大館市に入ると、ビルが目立つ。久しぶりに大きな町へ来た感じだ。
 大館で昼食。さらに足りない食材を仕入れて、自炊準備は完了。

 7号線こと羽州街道を奥羽線の線路に沿って北上すると、またよさげな温泉が点在する。碇ヶ関IC近郊の温泉は、入れる機会が少ないだろうと思っていたが、田沢湖から西よりのルートを取ったため、がぜん現実味を帯びてきた。
 一応この辺りでは、日景温泉、湯ノ沢温泉、古遠部温泉、あいのり温泉などを考えていた。一つだけ選ぶとしたら、まあ、露天風呂もあるし、この中ではメジャーな日景温泉か…(注 あいのり温泉は残念ながら廃業したらしいです。2004年に「ゆーとぴああいのり」という公共福祉施設に生まれ変わるようです。心霊スポットとしてのあいのり温泉をお探しの方は、こちらのサイトへどうぞ→tonkyさんの北海道東北心霊話スポット情報 青森 碇ヶ関でお探しください(怖いの苦手な方はご遠慮ください))。


 大館から17キロほど。幹線道路を外れると急に緑が濃くなる。
 簡易舗装の道を行くと、ふいに昔ながらの建物が現れた。


 ここはどこ?
 またお風呂に入るんですか?

 郵便ポストも昔どこにでもあった丸い胴体の重そうなやつだ。
 日本秘湯の会の提灯が下がっている。

 入り口で料金を払い、廊下を行くと子供の笑い声。いかにもな食堂を過ぎてその先に卓球室。子供達がここで卓球に興じている。卓球室の存在自体がレトロでいいなぁ。

 脱衣所は男女別。
 広いテーブルのような座れるスペースがあり、ベビーベッドはないが赤ちゃんはここで脱がしたりできそう。
 男湯の内湯と女湯の内湯の間に混浴の露天風呂があり、脱衣所からも内湯からも直接露天風呂に出られるようになっている。露天風呂に通じるガラス戸は、上部だけ透明であとは磨りガラスになっていて、のぞかれる心配はない。また女湯内湯から露天風呂に通じるところには、木のついたてがあって、目隠しになっており、女性が露天風呂の様子をうかがったり、また内湯を見られずに出入りできるのがありがたい。


 レナを内湯の洗い場で洗っていたらパパと入っていたカナが露天風呂経由で呼びに来た。ここはシャンプー、シャワーなどはなく、石鹸とカランだけである。
 幸い露天風呂はパパとカナだけらしい。早速行ってみる。

 とても綺麗な色の湯だ。緑白色で底は見えない。もの凄くぬるぬるするので滑らないように注意。硫黄臭がして、塩味の加減が美味しい感じ。東北の草津と呼ばれる名湯で、三日の入湯で治癒する三日一廻りの霊泉だとか。
 湯は温めなのに、とても温まるのであまり長湯はできない。
 子供達は岩に付着したぬるぬる感が面白いらしく遊んでいる。


 内湯も総ヒバ造りでいい色。浴槽は二つあり、小さい方はぬるめでとても浅く作られていて、子供にも嬉しい。大人なら寝そべってつかれそう。
 ここは源泉も48度なので、すぐに適温の湯になるらしい。

 湯上がりはさっぱりすべすべ。
 雰囲気ともにとても気に入った。東北旅行に出発して、いくつか入った中で、今のところ一番のお気に入りかも。

 名残惜しいが日景温泉を出て、弘前市街を抜けると、目指す青森県相馬村の、「星と森のロマントピアそうま」はすぐだ。
 ここのコテージで3泊。

 ここは温泉ではないと旅行直前まで思いこんでいたが、ここも温泉だった。ちょっと嬉しい。この辺りは本当にどこでも湯が湧いているという感じだ。
 笑っちゃうのがコテージのお風呂。一般家庭用のバスタブという感じだが、これも温泉なのだ。吃驚。
 また、部屋には掘り炬燵がついている。冬は寒いんだろうなぁ。ただのコタツじゃなくて掘ってあるのがコテージについているのは初めて見た。

 
 子供達は二段ベッドにわくわく。日頃は布団の生活だものね。
 こっちがわの二階をカナのお部屋にするからね。レナも遊びに来ていいよ、とカナ。


 夕ご飯はシェフ・パパ特製比内鶏入りきりたんぽ鍋。
 すごーい、美味し~い。さすがパパ。


 コテージは斜面に並んで建っている。12星座の名が付けられている。
 木立があって弘前市街はよく見えないので、ここから何が見えるのだろうと思ったら、正面に岩木山だった。夕日が山の左手に落ちる。綺麗な夕焼けだ。


 夜はロマントピアの温泉へ。一応露天風呂もある。
 敷地内は広いので、大浴場のあるホテル棟へは車で行くことにした。
 源泉名はロマントピア温泉。そのまんまだな。栃木にはろまんちっく村温泉というのもあったが…。


 画像は男湯の内湯。広い施設に併設された温泉だからシャンプーやドライヤーなどの備品は全部揃っている。
 内湯から露天風呂へ出られる。
 暗いのでよく判らないが湯は透明らしい。ほのかな灯油の匂い。味は微妙にいろいろな味の入り交じった塩味。ここもそれなり美味しいかも。
 露天風呂、内湯とも、ちょっと熱めだが、入ってしまえばそれほど熱さは感じない。場所柄弘前の夜景が見えるかなと思ったが、白神山地の方を向いているらしい。夜なので近くの木が鬱蒼としていることぐらいしか判らなかった。
 肌当たりはかなり、きしきし。でも湯上がりは相当すべすべ。大沢温泉のように翌日まですべすべが効いているというほどではないが、その日のすべすべ度はかなり高い。
 内湯は浴槽内に吸い込み口が二つあって、循環?という感じだが、露天風呂はかけ流しっぽい。まあコテージにまで温泉を引くくらいだから湯量はそれなりにあるのだろう。

 さっぱりしたところで外に出たら、いつの間にか空は満天の星…。

つづく


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