子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★☆☆ 泉質★★★★★ 滑りやすい泉質なので注意
- 設備★★★★☆ 雰囲気★★★★★ 豊沢の湯には、ベビーベッド代わりになる畳スペース有り
子連れ家族のための温泉ポイント
宮沢賢治ゆかりの温泉、大沢温泉に初めて来たのは2002年夏。東京から岩手まで車を飛ばして来てここで休息。疲れ切った夫がここのお湯に入ったらすごく身体が楽になったという、ある意味我が家の伝説の温泉。
その時夫がお風呂で出会った人は、花巻に仕事で来ていて、もう半年ぐらい自炊棟(現 湯治屋)に一泊2000円ぐらいで泊まっているって言ってたそう。それを聞いてから夫はリタイヤしたら大沢温泉に逗留したい…そう思うようになった。
念願かなって2021年。なんと2回も大沢温泉に泊まっちゃったよ。3月に1泊、10月には3泊。たぶんまたそのうち行くだろう。ちょっと家からは遠いけど。そしてお風呂を撮影させてもらいたかったので10月の時は取材もお願いした。(その時の記事→【岩手観光】宮沢賢治童話村や大沢温泉を巡る花巻観光モデルコース)
2002年当時、大沢温泉には「山水閣」「菊水館」「湯治屋(自炊部)」と三種類の宿泊施設があったが、この20年ほどの間に変わったことといえば、茅葺屋根の菊水館が泊まれなくなったこと。
2015年に菊水館側に車で行く道の法面が崩れたためだそうで、未だ道路は復旧していない。そこで現在の菊水館は「ギャラリー茅」になっていて、湯治屋から橋を渡っていけば行けるが、3月の時はクマが出るからと橋も通行禁止になっていた。
また2015年に湯治屋をリニューアルして、テイストを山水閣と揃えたと言っていた。たぶんその時に「自炊部」の名前から「湯治屋」に変わったのかも(未確認)。
ここではお風呂を中心に紹介する。まず湯治屋に混浴露天風呂「大沢の湯」、男女別内湯「薬師の湯」、女性専用半露天風呂「かわべの湯」があり、山水閣に男女別半露天風呂(冬季は窓を閉めて内湯になる)「豊沢の湯」があり、これらは大沢温泉のどこに泊まっても自由に入れるし、それぞれ日帰り入浴も受け付けている。
この他に山水閣には宿泊者専用の「山水の湯」と「貸切家族風呂」があるが、私は湯治屋にしか泊まっていないのでこちらはわからない。また菊水館に「南部の湯」があったが、今はお湯が入らず見学のみ。
泊まって最初に入ったのは女性専用「かわべの湯」。ここがある分、女性の方が大沢温泉で入れるお風呂は多い。しかし混浴の「大沢の湯」は夜のごく短い女性専用タイム以外は入りにくいので、男女の利点はどっちもどっちかなという気はする。
「かわべの湯」は川に向かって開けている半露天風呂で、お湯は無色透明。熱いが入れば入っていられる温度。トロミがあるが、3月に入った時はそれほど協力にはにゅるにゅるしなかった。肌を滑らせると引っかかる部分はあるのに肌の上にジェルの層があるようなにゅるにゅる感。手のひらでお湯を包むとクリームかジェルを挟んでいるみたいになる。
かわべの湯から川の方を見ると、昔の源泉跡が見える。
大沢温泉のお湯遣いに関しては、「豊沢の湯」は循環だが他は源泉掛け流し。ただし塩素消毒しなくてはならないという指導があり、消毒臭は致し方ないということだった。ご主人は消毒臭がしないように近々方法を変えたいと言っていて、実際に10月に泊まった時はどのお風呂も消毒臭がしなかった。もしかしたら変わったのかも。ちなみに10月は塩素臭ではなくかわりに植物のような青臭いにおいになっていた。
次に男女別の「薬師の湯」へ。
ここは熱いお湯とぬるいお湯の二つの浴槽がある。温度は湯量を調節することで変えているそうだ。浴槽のタイルがレトロかわいいのが印象的。女湯は脱衣所まで螺旋状の階段を下りてくるところも気に入っている。
なおシャワーはない。お湯と水の蛇口があって、そこか湯舟から汲んで使うことになるが、このお湯も源泉なのですんごいにゅるにゅるするんだよね。
一応備え付けのリンスインシャンプーや、脱衣所に1つだけドライヤーがあったりするので、豊沢の湯に行かないならここが湯治屋の洗髪場ということになる。だけどカランと湯舟が近すぎるので泡が浴槽に入りそうでひやひや。髪を洗うなら「豊沢の湯」をおすすめする。
メインの混浴露天風呂「大沢の湯」は、やはり昼間に入るのは勇気がいる。バスタオル巻きも湯あみ着も禁止。あくまでも衛生面からの禁じているということで、ご主人はいずれ抗菌の湯あみ着導入などを考えたいと言っていた。
といっても泊まったからには女性専用タイムを活用する。30分ぐらい前に館内放送が入り、時間前には女性スタッフが男性が入らないように廊下で番をする。ちなみに女性用脱衣所というものがあるので(わかりにくい場所だが)日帰り時間にチャレンジするならここを活用したらいい。
露天風呂は広い岩風呂で、中央に柱があり右がぬるめ、左の中央に近い岩の下が少し凹んでいてここが熱い。お湯の注入口があるのだ。
使っている源泉は同じはずだがこの「大沢の湯」が一番にゅるにゅるした。pH9.0の真骨頂という感じ。角質がみんな溶けそう。
入って川の方を見ると、右手に菊水館に繋がる橋と灯りのついた菊水館が見える。また左側の隅に川を見ながら座るのにちょうどいい岩場があり、知っている人はそこに陣取る。
人がいなくなったからそこに行ってみたら、場所を取られないように手ぬぐいを広げて横の岩に掛けてあって呆れたことがあった。私が岩に座ったら慌てて戻ってきて手ぬぐいを回収して行ったけど、手ぬぐいを掛けたら自分の場所だみたいなルールでもあるのかな。
最後に「豊沢の湯」だが、ここだけは「山水閣」の陣地なのでとにかく「湯治屋」とは扱いが違う。山水閣に通じるドアを開けた途端、あったか~いと廊下の暖房の違いに力が抜ける(3月は寒かった)。
そして「豊沢の湯」には"ひととき"のシャンプー、コンディショナー、ボディーソープ、"エステロワイエ"のクレンジング、ローション、乳液などのアメニティがあり、ドライヤーもたくさんある。夜寝る前のお風呂はほぼ「豊沢の湯」で決まりだ。
なお宮沢賢治と大沢温泉のエピソードで、温泉を汲み上げる水車を止めてしまういたずらをしたというものがあるが、当時の水車はもうない。今、大沢温泉にある2つの水車は両方オブジェ。
さらに当時は水車で汲み上げていたという源泉はもう使っていないようで、新たにボーリングして汲み上げている1本で全ての浴槽を賄っている。湧出地は坂道の神社の入口だ。
そして宮沢賢治といえばだが、夜に「大沢の湯」の露天風呂に入っていると、湯気に半分包まれながら、今見上げる夜空に銀河鉄道が汽笛を鳴らして横切ったら素敵だろうなぁなんて考えちゃうのである。