夏休み東北日記 四日目


7月28日(日)

 今朝は快晴。
 朝食はホテルのビュッフェだが、今日は外のテーブルにもクロスがかかっている。気持ちいいから外で食べようよ。

 昨日寝る前に、またハーブバスに入り、ハーブ入りボディーソープで体も洗ったはずなのに、今日になってもまだ体から温泉の匂いが消えない。

 食事の後は、隣のハートハーブへ。
 まだ朝なのでほとんどひとけがない。


 ハートハーブは今、庭の一部が改装中なので、あまり見栄えが良くない。
 ハーブガーデンを散策すると、風に乗ってミントの香り。
 ラベンダーは遅咲きの品種が多いのか、まだあまり咲いていない。
 カモミール、ナスターチウムなどが揺れている。



 さあ、今日の予定は八幡平をドライブ。
 毎日ドライブ(車で走っている)じゃないか、とはドライバーの弁(笑)。

 341号線を玉川に沿って北上すると、秋扇湖、宝仙湖と、コバルトブルーのダム湖が続く。


 上流の玉川温泉の酸性泉が流れ込み、田沢湖も深い碧だというから、このあたりの湖の色も玉川温泉の影響を受けているのだろうか。
 途中、玉川温泉の水を中和して、玉川を魚の住める川にするための施設などもあった。

 八幡平近郊は、それはもう沢山の有名な温泉が湧いている。
 玉川温泉、大沼温泉、後生掛温泉、蒸ノ湯温泉藤七温泉、少し離れて松川温泉などなど。
 本当は全部入りたいが、とても無理なので、どうしても入りたいところを上からリストアップすると、藤七温泉、玉川温泉、次点に蒸ノ湯温泉ということになった。

 まずは玉川温泉へ。
 駐車場は秋田県が管理している無料駐車場がある。そこに車を停めて見下ろすと、もうもうと湯気があがっている。
 駐車場からは急な階段を下りて、さらに坂を下ると、手前に玉川自然研究路の入り口が、奥に玉川温泉の建物が見える。


 何と言っても色が凄い。緑やオレンジが入り交じった感じで、強力に効きそう。
 レナはのぞき込んで、「いい匂いだね」
 齢二歳にしてその台詞。将来は温泉通か?
 玉川温泉は日本一pHの低い強酸性泉として有名だ。薄めず飲むと歯が融けるというから凄い。他にも岩盤からラジウム放射線が出ていて、いろいろな病気に効くらしい。


 岩盤浴のため、ござを敷いて寝ころんでいる人も多いが、今日は炎天下。日射病で死者でも出そうだ。

 小さい子どもにはままあることだが、レナもまた石マニアだ。すぐ石を拾ってくる。車の中にもホテルにも小石を持ち込んでいる。
 玉川温泉の北投石を見て、「ママ、石、拾っていい?」
 それだけはやめてくれ、娘よ。あれは天然記念物で勝手に持ち出すと罰せられるのよ。それに家の中に放射線を発する石が転がっているのも嫌だし。

 玉川温泉には非常に入りたかったが、とにかくもの凄い人出で、混雑のきらいなパパは、大型観光バスが三台も停まっているところは勘弁してくれ、と言う。
 しかたない。ここは見るだけで、次へ行こう。

 アスピーテラインに入って、葛折りの道を行く。
 大沼温泉、後生掛温泉などを過ぎると、蒸ノ湯温泉だ。
 蒸ノ湯温泉のふけの湯温泉
 三角屋根の建物だ。


 料金を払うと、中にも露天風呂はあるが、有名な露天風呂は外の道を行くと教わり、子供達を抱っこして坂を下る。


 もうもうと蒸気が上がっているが、ここは、湯気だけでなく、お湯がぼこぼこばしゃばしゃと勢い良く噴き出しているのがよく見える。これは凄い。いかにも温泉という感じ。
 画像で見える、蒸気の手前が女湯の露天風呂で、蒸気の奥に男湯の露天風呂がある。


 つくりはどちらも同じ様で、四角い木の浴槽からは、そこここの涸れた大地から湯気が噴き出しているのがよく見える。どこも湯気だけじゃなくて実際に湯が噴き出しているのがここの凄いところだろう。温泉に飽きてきたカナも、これには吃驚。面白がっていた。

 …しかし。
 このロケーションから想像される湯は熱湯のはずだが、どういう訳か、浴槽の湯はぬるめだ。しかも湯口から投入される湯に触ってみると、ほとんど冷たい。これはどういうことだろう?と考えているうち、だんだん浴槽の湯自体がさらにどんどんぬるくなってきた。
 ぬる湯の好きな子供達にはありがたいし、ついつい長湯になってしまう。
 匂いは硫黄臭。色は緑がかった白濁だが、鶴の湯のような綺麗な白ではなく、わりと澱んだような色。細かい湯の花が浮いている。味は癖のあるミネラルウォーターみたい。

 ロビーに戻って、露天風呂の湯のことを尋ねると、高温なので水でうめているとのこと。でも投入される湯がほとんど冷たくて、浴槽もどんどんぬるくなってきたことを伝えると、ぎょっとして、調節し直さないとと言って、従業員が跳んでいった。
 …すると、なにかい?
 源泉温度が88度もあるのに、ほとんど冷たくなるまで水でうめたってことは、あれは源泉浴槽じゃなくて、単なる水風呂かい?(笑)

 とはいえ、それだけ薄くてもあの色と香りと味。
 まあいいか。
 ロケーションはとても気に入ったし、悪くなかったということにしておこう。
 もっと時間があれば、入り直すこともできただろうけどね。

 12時半だったので、ふけの湯温泉で昼食もとった。ここは食堂も休憩室(有料)もある。ふけの湯ラーメンは山菜も入ってなかなかグッド。食堂は混んでいた。昼食時に当たったので、お風呂は空いていたのかもしれない。

 次のターゲットは藤七温泉。
 ふけの湯を過ぎてしばらく行くと、アスピーテラインは展望がよくなる。
 八幡平頂上駐車場を右に行くと、すぐ東北で一番高所にあるという藤七温泉 彩雲荘につく。


 到着直前に、二歳のレナが入眠してしまった。まずいパターンだ。
 お風呂に入って食事をして車で揺られて…眠くなる要素が全部ある。
 抱っこして車を降りたが、まったく起きる気配がない。
 パパがどうする?と問う。せっかくここまで来たし、入りたいなぁ。

 ぐっすり眠っているレナを抱きかかえて、取りあえず入る。ロビーは沢山の人でごった返している。混んでいるんだなぁ。益々まずいなぁ。日曜日だし、仕方ないか、

 混浴露天と男女別露天風呂があるようだ。とにかくここは、女性用露天風呂の眺めが絶景だと聞いている。男女別を選択するべきだろう。二手に分かれるとき、レナだけでなくカナも一緒に入ることにした。眠っているレナは、起きても機嫌が悪いだろうから、カナが一緒だと少し違うかもと思って。

 案の定、脱衣所で目が覚めたレナはぐずぐず言い出した。無理もない。寝付いたばかりで起こされたのだから。
 しかし、カナが「お姉ちゃんが脱がせてあげるね」と言ったらがぜん機嫌を直した。カナ、成長したねぇ。



 しかし、脱衣所は混雑している。脱衣籠はほとんど余っていない。
 四角い脱衣所の面の一つが露天風呂に、また別の面が内湯に通じている。
 どちらも非常に混んでいる。どうしてこんなに芋洗い状態なんだろう。それだけ人気が高いということなのだろうか。

 内湯も木で出来ていていい雰囲気だったが、体を流したらさっさとその眺めが良いという露天風呂に行ってみよう。子供が多い。何故か浴槽内で石鹸を使って顔を洗っている子供が二人もいる。露天風呂は蛇口もないのに(注 混浴にはあったそうです)、石鹸やシャンプーらしいボトルが備え付けてある。まさか湯口から直接お湯をくんで流すために設置されているのかなぁ。内湯でことは済みそうだけど。

 眺めはまあまあ。凄く期待度が高かっただけに、それほどでもなかったかなという感じ。基本的には開放感もあって良い。道路まで見えてるけど、紅葉の季節など綺麗だろう。
 7月末は、山は高山植物の季節。藤七近辺も野草が沢山咲いていた。白や黄色、可憐な花々が風に揺れていた。露天風呂からも花が見えるのがちょっといいかも。

 湯の色はふけの湯とほとんど同じ。少しふけの湯より湯の花が大きい。味はふけの湯ほど美味しくない。ちょっと金属っぽい味。
 たまたま入っていた別の親子の会話。
「お母さん、どうして温泉は卵の匂いがするの?」
「…それは卵のエキスが入っているから」
す、凄い珍回答だ。

 湯温も熱すぎず、深さもレナの背が立つくらい。浴槽は木で四角い。この辺りの温泉は四角い木の浴槽がポピュラーらしい。
 ゆっくり入っていたら、やっと少し空いてきた。

 帰り道、子供達は二人とも寝てしまった。
 ホテルに着いて、目が覚めたら、またハートハーブのウサギを見に行こうね。
 今夜は田沢湖最後の夜だから。

つづく


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